爽やかで切ない青春ストーリー、そんな感想さえ生温いと感じるほど、この小説には凄みがありました。
もちろん、主人公とヒロインの会話は甘く、文章は清涼感を纏い、登場するキャラクターはちゃんと熱をおびています。伏線の回収や、読者を飽きさせない情報の出し加減も上手いです。ライト文芸小説として完成度の高い作品だと感じました。
しかしそれ以上に、この小説の凄みを醸し出しているのは、青春の描き方だと思います。作中においてしばしば使われる「青春」という単語は、彼らにとって「輝いているけど、自分には届かないもの」のような諦観の意味を持っています。その距離感が、この作品に命を与えているように思えました。
付かず離れずの位置で眺めてため息をつくような青春を謳歌する彼らが最後にどのような決断をするのか。結末の感じ方はおそらく人それぞれでしょう。前向きだと捉えるか、それともこれ以上なく残酷で、だからこそ青春だと捉えるか。これは個人的な意見ですが、後者で捉えてしまう人にとって、この作品はかけがえのないものになると確信しています。
気になる方はぜひ読んでください。