第37話 ある山道
今もみんなが通っているかは分かりませんが、30年ほど昔の話を一つ。
その頃はまだ高校生で免許を持っていなくて、先輩の車に乗せてもらいサーフィンによく行っていた。
関西から伊勢の国府ノ浜へもちょくちょく行っていた。大体朝の3時から4時頃に海に着くように行っていたので真夜中の移動になる。
その頃は伊勢自動車道が久居までしか開通していなくて、久居からは23号線で伊勢神宮の内宮の手前まで行き、そこから山越えになる。
この話はその山越えでの話。
この道はトンネルを抜けダムの湖畔を下って行くルートです。真夜中とあって行きかう車もほとんどなく、民家も無いので一人だと怖い道ですが、男4人乗っている車の中はサーフィンの話で盛り上がっていて怖いって感情はなかったです。
曲がりくねった上り坂を登り切りトンネルを抜けました。あとはダム湖畔を下って行くだけ、とカーブを曲がりきったところで急ブレーキ。
「先輩、冗談やめてくださいよ~」
「いや、あれ…あれ見てみ」
車の10メートルくらい先にヘッドライトに浮かび上がる老婆の姿が、振り返るでもなく次のカーブの先に歩いて行きます。
ダム湖の湖畔で脇道もありません、しばらく見送りその老婆がカーブの先に見えなくなりましたが、
「深夜2時だぜ、何しにこんなところ歩くんだ? 民家があるのはまだまだ先だぜ。幽霊か?」
「今までそんな話聞いたことないですよ。って畑も田んぼもないし…山菜採り?」
「そのカーブの先に婆さんが居たら山菜取りだな」
ゆっくりと車をスタートさせカーブを周っていきます。
居ない。
次のカーブを周っても
居ない。
そんな馬鹿な、もうとっくに追い抜いてるはず…
男4人で見ているのに、見落とすわけがないじゃないですか。
10分ほどで民家が見えてきたけど、結局老婆は居ず。
車中は、
「やっぱり幽霊?」
「初めて見た」
「とりあえず人の居る所へ行こう」
その当時は、そこを越えてから開いてる店はなく、コンビニもまだなかったので知り合いのサーフショップに駆け込みました。
この話をショップのみんなに話すと、
「たまに出るみたいだねぇ」
「早く教えてよ」
この老婆の話、最近北野誠さんも話していたので結構有名だったのかもしれません。
今はバイパスとかが出来て通っていないかもしれませんが、30年ほど昔の話でした。
黄泉怪談! くまねこ @TakeshiShimizu
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