MIN的SF短編集

ウキペデアとオタク少女とアリス

2025.

【Summer】.

【Japan】.

【Shikoku】.

【Tokushima】...

……。

「あうーーん」

Nerd風な少女はデスクに向き合っていた。

と言っても誰かに課せられたジョブではなく、ただ自分のために、ただ暇を潰しているだけなのだが。

少女は自分の事にはちゃんとする性格なようで、真剣にデスクに向き合っていた。

「このアリスというキャラクター可愛いです。」

少女はNerd風な風貌にとても似合う薄気味悪い表情をうかべ、言った。

少女が見つめるやたら眩しいモニタに映されているのは、やたら眩しい金髪のやたら眩しい水色の服を着たやたら眩しい少女だった。

ピクセブというイラストSNSに誰かが投稿したキャラクターはNerdなGirlに気に入られたようだ。

「ファンアートのタグはつけてありますが、なんの作品か書いてません……書いとけよぅ」

少女は、少々不機嫌なポーズを1人の部屋で1人でとりつつ、別タブでウキペデアを開ける。

ウキペデアとは……。

ウキペデアである。

「ええっと、「アリス」で検索しますです」

少女はまたしても誰も居ないのに1人で変な敬語を使うと。

タイピングをする。

パチ、パチとテンポの良いタイプではあるがブラインドタッチとはいかないようで、文字配列をみながら打ち込む。

「アリス」

すると次のような結果がでた。

アリス（曖昧さ回避）

「え、アリスっていっぱい意味があるん？」

少女は少し驚きながら曖昧さ回避なアリスをクリックする。

すると百は超える結果が出てきた。

「なんですかこれ、いっぱいあります。クトゥルフ的なアレですか？」

取り敢えず一番上の項目をクリックしてみる。

アリス、魔法少女アリスの登場人物。

「アリスは魔法少女なのですか」

ひょんなことから魔法少女になった愛莉鈴は深遠なる地下世界、の女王ハートを討伐することになる。

「へー、反逆者なのですね」

亡くした戦友（とも）の思いをかて女王ハート絞殺するシーンはその年アニメ名シーンというTV番組企画にて1位をとった。

「怖え。色々」

最終回でトラックに轢かれて死ぬ。

「死ぬのか……アリス……」

「ん？　セカンドシーズンでは？……2期もあるの？　アリス死んだのに？」

自らの手で殺したはずの女王ハートの手により復活したアリスは女王ハートより強大な敵、ダーク・アリスと戦うことになる。

「生き返るのですか……ダーク・アリスとはいったい……」

「ん、サード・シーズンのアリス？」

サード・シーズンではファースト、セカンド・シーズンのような戦闘シーンは無く、サード・シーズンでは日常ものとなり、

ダーク・アリスや女王ハートとお茶をしたり女子会を開いたりして毎日を過ごしている。

「おお、良かったですね！　平和です！」

「……でも探してるのはこのアリスじゃないです。まあお気に入りに入れてアニメ配信がないかみますけど」

少女はアリスの検索結果にページを巻き戻し、何個かあとのアリスをクリックする。

いんらんありすのえっちなおつかい☆の登場人物。

「いんらんありすのえっちなおつかい☆の主人公ですか！……これじゃ……ないかな？　探してるのは」

「でもみますです」

…………。

………。

……。

…。

「うーんえろげですね。これ」

少女はやたらと多いエンディングの条件とその内容をみたあとゲーム性にたけたエロゲなのだなぁと思い、大人になったら買おうとウキペデアのページをお気に入り登録した。

「まさか皆殺しルートがトゥルーエンドとは……」

気を取り直してまたしても適当なアリスをクリックしてみる少女。

今度ももしかしたら成人ゲームのキャラクターに当たるのではないかという気持ちに嬉しみを感じてページがロードされるのを待つ。

オレ、アリスとお前のア○ス～迷いこんだは雄のクニの登場人物。

「あわー……」

一瞬面白そうと感じたが概要をみてとても女性向けとは言えないようなものだったのでブラウザバックした。

「乙女にはまだ早いですね、アレは。」

こんな同人ゲームのキャラクターがウキペデアに記事として投稿されている日本の面白みを感じつつ少女はまたしても適当なアリスをクリックした。

「クリック！　クリック！」

ゆけ！　白雪プリンセスの登場人物

「あれ、これはアリスが主人公ではないようです」

第3巻にてプリンセス白雪と「姫」を争うライバルキャラとして登場する。

第6巻にてそもそもアリスは「姫」では無いことが判明して自殺する。

「メンタルよええ」

第23巻からはアリスの1万のクローンが人間たちを虐殺してプリンセス白雪とは別世界、パラレルワールドの人類を滅亡に貶め、

プリンセス白雪の世界に進軍する。

メインキャラクターであるシンデレラ、かぐや、DJBeastを殺害する。

「誰だよ……それとアリスこええ」

最後はオリジナルのアリスがプリンセス白雪に愛の告白をし、滅びた地球で結婚式をあげて2人とも死ぬ。

「ヤンデレかぁ」

「……いいなぁ」

良かったね。

良かったと思ったのでタイトルで検索かけてみたら普通に探しているアリスだった。

「ヤンデレだったのですかー……」

「良いです！」

「……そういえば、アリスって元ネタの神話とかあるのでしょうか……」

「というかこれだけかぶってるとないとおかしいですね」

ウキペデアのページに戻って古い順に変えて、古そうなのをクリックする。

「ええっと、もとは小説なのですか……」

「ふうん、著作権がきれてるからフリーなんですね」

「……にしてもこのアリス……あんまり可愛くないですね……」

ウキペデアに表示された原作小説の挿絵をみてなんとなく失望したり満足したりしたので、バツマークを押して、タブを閉じた。

「……」

「私もオリジナルのアリスを描いてみるです！」

「とりあえず原作を買いにいくです！」

少女は小学生からのときから使っている学習イスから立ち上がり、

また座る。

そして通販サイトの電子書籍のページを開くのであった。

おしまい。

Alice's story goes on……