アナーキー☆セブン 【Episode:5】
〔5〕
後部座席に向かい、緊張した面持ちの子供達をゆっくりと見回す。
「さて、まずはダイヴする前に君らの名前を教えてくれ。俺は、兎羽野忍だ」
「俺は
そう赤く髪を染めた男児が言い、隣の眼鏡の男児は「
ボブで大人しそうな女児はおずおずと「
「よし、ケンにマナブに、ナギサ、ユナだな。俺のことは兎羽野でも忍でも、オッサンでも好きに呼んでくれ」
こっくりと四人が頷き、俺は彼らの緊張を少しでも和らげさせるように、笑みを浮かべる。
「一応、聞くが……帝都銀行のMEL空間金庫に、アクセスしようとしたことは?」
途端に四人が気まずそうに互いの顔を見合わせ、俺は「トライしたんだな」と溜息をつく。ケンが両方の眉を上げて拗ねたように口を尖らせる。
「クラスに、マジで嫌な奴がいるんだ。そいつ、父親が帝都銀行のセキュリティー管理者でさ……」
「一泡吹かせてやろうと、思ったんです」
「……みんな、わたしの為にやってくれたの。わたしがあの子にいじめられていたから……」
ユナがおずおずと口を開き、ナギサが「か弱い女の子をいじめるんだもの。最低よ」と忌々しそうに続く。俺は思わず両手で顔を擦りながら「マジで嫌な奴だったか……」と呻くように言う。
友達を守りたい気持ちは分かるが、やり方が間違っているぞ……まあ、そういったお説教をあとだ。今は、クソ爆弾魔からこの子達をどう守るかが先決だ。
「おーい、いつまでお喋りしてるんだ? さっさとダイヴしないと爆発させるぞー」
「今からやるよ」
うるせえぞ、このクソ野郎! と、怒鳴りつけてやりたいのをぐっとこらえて、俺は鞄からゴーグルを取り出す。
「まずは、俺が指定するランデブーポイントに潜ってくれ。そこで全員集合だ」
俺は四人のゴーグルにアドレスを入力し、子供たちがリラックスするように呼吸を整えたり、シートに凭れるように体勢を変えはじめる。ダイヴ慣れしたその様子に、感心するやら呆れるやら、帝都銀行の厳重なセキュリティーを簡単に突破するスキルがありそうで恐ろしくもある。
子供たちがそれぞれ準備を整え、ケンが三人に言う。
「じゃあ……皆、準備はいいか?」
三人が頷き、それぞれ鞄から何かを取り出す。彼らが手にしていたものを見て、俺はハッと息を呑んだ。それは、スペース・カウボーイのキーホルダーだったのだ。
きっと子供たちがリアルに戻ってきた時のアミュレットに違いない。彼らは互いに頷きあい、それから俺に顔を向けた。
「こっちの準備はオーケイだぜ」
「了解。じゃあ、ランデブーポイントで会おう」
四人がゴーグルを装着し、MEL空間へアクセスしたのを確認し、俺は運転席の爆弾魔を見やる。
「おい、爆弾魔! 何度も言うが、俺達がダイヴしている間に何かしたら、ぶっ殺すからな」
「分かってるって! 安心して潜ってきなよ。チャオ!」
いつの間にか外の風景が都市部から閑散とした田舎の道になっているのに気づく。俺は道路案内標識で地名を確認し、ゴーグルを装着しランデブーポイントへとダイヴする。
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