アナーキー☆セブン 【Episode:3】
〔3〕
見れば、駐車場内を蛇行するように一台のバスが走行を始めており、俺も走るスピードを上げてバスへと向かう。しかし、バスはそのまま道路に出てしまった。バスは派手にクラクションを鳴らしながら、どんどん遠のいていく。
このままだと、マズい……! ふと視界に入ったダイナーに、いやにごてごてとしたバイクが何台も停められているのに気付いて、道路を突っ切るように走る。
何度か車にひかれそうになりながら辿りつき、何台か停めてある中で、キーが刺さったままのバイクに飛びのる。少し離れたところで談笑していた悪ガキ(パンク)どもが、こちらに気付いて怒鳴り声を上げた。
「少し借りるだけだ!」
俺は警察バッジを掲げて、一気にフルスロットルで走り出す。どうもマフラーを改造しているらしいバイクは大袈裟なエンジン音を上げ、俺は自動車の間を縫うようにして、バスを追いかける。
バスは信号無視をして道路を突っ切り、通行人の悲鳴が響き渡る。間一髪誰も轢かれなかった事に安堵しながら、俺もその後を追う。
バスはどんどん他の車を跳ね飛ばす勢いで走り、ますます距離が離れてしまう。
しかも暴走するバスのせいで、巻き込まれた車がスピンをしたり、反対車線へと突っ込んだりと、滅茶苦茶な状況になっている。これじゃ、バイクでも走れない……! ともかくバスに乗り込まなくては……俺はバスの走る少し先に横断歩道橋があるのに気づいて、下品な音を出すホーンを鳴らしながら歩道へと乗り上げる。
「悪いな! 通してくれ!」
バイクの存在に気付いた通行人が驚愕の声をあげつつ道の脇に寄り、俺はバイクを一気に加速させて歩道橋へと向かう。道路を見やれば、相変わらず無茶苦茶な運転をしながらバスは直進している。
俺は横断歩道橋の側にバイクを乗り捨てる。改造された、いやに大きな背もたれ部分に釘打ちのバットが装備されているのに気づいて、俺は思わずニヤリとする。
「
俺は釘打ちバットを掴んで、横断歩道橋を一気に駆け上がる。少しはトレーニングの成果があったのか、さほど苦痛もなく階段を上りきって、まっすぐこちらにやってくるバスを確認する。
「まったく……なんで、こんなことに……」
柵を跨るようにして、バスがこちらに猛スピードで走ってくるのを見つめる。アドレナリンでも出ているのか、恐怖感はあまりなく、ふうっと呼吸と整える。
一歩タイミングを間違えれば、道路に叩きつけられてぐちゃぐちゃになるか、車に轢かれて、これまたバラバラになるか……
まあ、その時はその時だ。ただ死ぬ、それだけだ。
いつだって死んでもいいと思ってる。だろ? そう、自嘲気味に呟く。
バスが歩道橋の下に近付き、俺は飛ぶタイミングを計って数メートル下の道路を見つめる。バスがスピードを保ちつつ歩道橋の下を通り過ぎようとしたのと同時に、柵を蹴るようにして飛び降りる。
一瞬の浮遊感。直後、ドゴン! という衝撃音と共にバスの平屋根に着地する。しかし、そのままバランスを崩して、平屋根の上をごろごろと回転してしまう。あわや、道路に放り出されそうになって、慌ててバスの端に掴まる。
思わず安堵の吐息をつきつつ、匍匐前進をして、バスの窓を覗きこむようにする。
後部座席に固まるようにして男女二人ずつ四人の小学生が座っており、こちらに気付いて硬直している。運転席でハンドルを握っているのは、やはりアンドロイドらしい。
俺は真ん中あたりの座席の窓に釘打ちバットを叩きつける。
ガラスが砕ける鋭い音がし、バットを放り込み自分も車内に身体を滑り込ませた。女の子二人は悲鳴を上げ、俺は彼女達を落ち着かせるように両手を上げる。
「最近、流行りの乗車方法だ」
冗談で和ませようとしたが、一人の眼鏡を掛けた男児が「そんなの、聞いた事ないですよ……」と強張った顔で言い、俺は片方の眉を上げて「ジョークだよ」と返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます