夏、ピンクと紫の街の夜

舞茸ヒロカズ

ワケありで、巨乳でロリな女の子(5・7・5だよ)

 田口くんに連れられて、飛田新地という街に行った。そこはいわゆる遊郭が現代にまで形を残している街で、ガレージみたいなスペースに女の子とババァがセットでたくさん並んでいて、ババァにお金を払えばそこにいる女の子とヤレちゃうというぶっ飛んだスポットだった。

 蒸し暑い夏の夜だった。田口くんは「そんなぶっ飛んだところがあるんだよ」という社会科見学的なスタンスで僕をそこに連れていってくれたみたいだったけど、僕はその街に漂うピンクと紫の空気にあてられて、だんだんと気持ちが傾いていた。

 「お兄さんちょっとこっちにおいで、かわいい女の子だよ」とババァが通りをゆく人を誘うその様は、子供の頃怖かった、甘い誘惑について行ったら最終的に食べられちゃう。みたいなお話にでてくるお化けを彷彿とさせ、蒸し暑い夏の夜のはずなのに、どこかしら涼しさを感じるぐらい肝から僕を冷ややかにするのだが、客引きのババァと並ぶ女の子達は「どうしてこんな子が?」というぐらい高水準な見た目をしている。

 溜まっていたわけではない。むしろなんならその数時間前に一発マットヘルスで昇天させられていたので、ヌキを必要としているわけではなかったのだが、その女の子たちはキャバクラなどでお話をするだけでもお金を払う価値があるような見た目の女の子ばかりだからどんどん気持ちがソッチにいってしまう。

 そんなわけで「キャバクラに行く感覚で、インタビューをするだけだ。それならババァのお化けに最終的に食べられることもない」そんな心境で、『見るだけ』の社会科見学の延長で『話すだけ』だと思って、財布の中身を確認し、突入の覚悟を固めた僕。その一方、僕の性癖にどストライクなブルマコスでロリで巨乳な女の子を見つけてしまう僕。そしてその子と何分コースにするかという相談をしているうちに愚息がにわかに元気をとりもどし、気づいたら思いっきりイキにかかった、実践学習の授業料、三十分二万一千円を払っていた僕がいたりして。

 現在無職の男(私です)が払う金額ではない。そんなんだから翌日おみくじを引いたら『お金の使い方を改めなければ破滅する』みたいなおみくじ(凶)を引くのだ。

 しかし最高な三十分だった。日本各地で「デカい」と評される僕の愚息はそのロリ巨乳女子『ゆあちゃん』にも「そんな大きいの入るかな」というコメントをいただき、その短距離ランナーっぷりを遺憾なく発揮し、かなりの時間を残してふにゃふにゃに戻った。本当にありがとうございました。

 だが、その余った時間で好きなアニメの話をしながらイチャイチャしていたら彼女の舌にピアスが空いているのを見つけ、キスはまさにタバコのフレーバーがしたし、「尊い」「迫る」という言葉が通じなくて、やはりただ可愛いだけじゃなく、「ワケあり」なのだなというのを感じたりして。

 気持ちよかったけど、今だけの輝きを売り物にする彼女を他の男達と同様に、『買って』しまったという気持ちが後に残り、賢者タイムはこれを書いている今も残るぐらいに長い。それがお化けについて行ってしまった報いなのかなと思う。

 ゆあちゃんと『事』をした部屋は冷房がガンガンに効いていたので忘れていたが、外に出るとそこはさっきまでの蒸し暑い夜で、外で僕を待ってくれていた田口くんは汗だくになっていた。田口くんが僕を待っている間に買って僕にわけてくれたたこやきは、その暑さの中の時間の経過で、すでにふにゃふにゃになっていたけど、すごく美味しかった。きっと僕はこの夏の夜のことを、そのふにゃふにゃのたこやきの味とセットで思い出すのかな、とか思ったり思わなかったりした。(了)

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夏、ピンクと紫の街の夜 舞茸ヒロカズ @maitake_hirokazu

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