第2話 学園ラブコメ始まりました。

 「そんな訳で、今日から優斗と私は藤ノ森高校に新学期から転校生として通うことになりました」

「お、おう」

「それでは用意を――」

「ちょっと、兄さん!早く起きてください!登校初日から遅刻するつもりですか?」

 俺の義理の妹と思われる少女が部屋に入ってきた。

「あの……」

「に、に、兄さん!朝から何やっているんですか⁉」

「こ、これはだな……」

「明日香さん、早く服を着てください!」

「はーい」

 そう言って、脱ぎ捨てられた下着と制服を着た。

 もちろん、優香に言われ、着替えを見ないように明日香に背を向けた。


「兄さん、これはどういうことですか?」

 少女は少し怒り気味で言った。

「えーと……」

「彼女は優斗の義理の妹で、名前は中村優香。彼女も私たちと同じく、今日から藤ノ森高校に転校生として登校します。細かい情報などは後でいいますね」

 と、耳元で言った。

「落ち着け、優香。俺もよく分からなくて、朝起きたらこの始末だ」

「つまり、朝起きると、明日香さんが裸でいたと?」

「お、おう」

「そうなんですか、明日香さん?」

「そんな感じですね」

「分かってくれたか?」

「だいたいのことは分かりました。しかし、そもそも寝坊する兄さんが悪いです!」

「り、理不尽だぁぁぁぁ――‼」

 ラノベの主人公は時にはこんな理不尽なことも受け入れなければいけないのか……


「私は朝食の用意をしてくるので、兄さんと明日香さんは早く着替えて来てくださいね!」

「は、はい」

「は~い」

 優香は不機嫌な様子で部屋を出て行った。

「明日香、この世界ではどういう設定になっているんだ?」

「私が口で説明するより、これを見てもらった方がいいですね」

 そう言って、タブレット端末を渡された。

 説明によると……

 俺は俺、優香、明日香の三人暮らしである。(俺高二、優香高一、明日香高三)

 優香は俺の義理の妹であり、俺が中二の時に家族になる。(母さんの連れ子) 

 両親共に考古学者のため、外国にいることが多く家にいることは少ない。

 明日香は俺の幼馴染で、お姉ちゃん的な存在でもある。(俺と優香が家族になったことをきっかけに、優香と知り合う。)

 ちなみに、明日香は女神なので親はいない。

「だいたいの情報は分かったけど……ここにある明日香は女神なので親はいないって何⁉」

「ここに書いてある通りですよ」

「え、女神やめたんじゃないの?」

「まあ、やめましたけど、ちょっとだけ女神要素があるんですよ~分かりやすく言えば、私は女神と人間のクオーターですね」

「な、なるほど。そういえば、このタブレット、異世界空間的なところから出していたな」

「分かってもらえて良かったです。それでは早く着替えて、下に行きましょう。優香が怒っていますから」

「おう。じゃあ、俺は着替えるから先に行っといてくれ」

「はい」

 そう言って、明日香は先に部屋を出た。

 俺はハンガーで吊るされていた制服を取り、すぐに着替えた。

「俺、この世界でやっていけるかな……」

 そんな不安を抱きつつ、部屋を出た。


「兄さん、朝食の準備できていますから、座って下さい」

 テーブルにはマーガリンの匂いが香る焼き立てのトースト、ちょうどいい加減にできた半熟の目玉焼き、そして色鮮やかなサラダが並べられていた。

「お、おう」

 何て、出来のいい妹なんだ……

「なあ、明日香」 

「どうかしましたか?」

「この世界、最高だな!」

「はい!」

「どうしたんですか、二人していきなり大声なんて出して」

「明日香と、優香の作った料理を食べることができて幸せだなって話していたんだよ」

「――っ⁉きゅ、急になんですか⁉ほ、褒めても何も出ませんよ?」

 優香が顔を真っ赤にして言った。

 可愛いうえに料理もできるとは……俺はいい妹を持ったものだ。


 朝食を食べ終え、俺は再び自分の部屋に戻った。

 一人、学校に行く支度をしていると、明日香が部屋に入ってきた。

「優斗、一つ渡さなければいけないものがあります」

「何だ?」

「これです」

 と言って、少し大きめの飴を渡された。

「飴?」

「はい。しかし、これはただの飴ではありません。この飴は優斗の記憶です」

「俺の記憶?それって……高二以前の設定上の記憶って言うのか?何か上手く説明できないけど」

「そうですね。まあ、難しい話は置いといて、優香や両親との記憶がなければ色々と生活で支障が起こるでしょう」

「まあ、確かに」

 俺は明日香に親がいない設定も十分、生活に支障が起こると思うんだが……

「私もう舐めたので、優斗も早く舐めて下さい」

「おう」

 俺はその飴を受け取り、舐めた。

 その飴は口に入れると、あっという間に溶けた。そして、記憶が頭に入ってくるのをはっきりと感じた。

「どうですか?」

「何か変な感じだな。自分の知らない記憶のはずなのに、懐かしく感じる……」

「まあ、すぐに慣れますよ」

「そ、そっか」

「はい」

 そして、俺と明日香は支度を終え、リビングへ行った。

「兄さん、明日香さん、制服とても似合っていますよ」

「ありがとう、優香。そういうお前も似合っているぞ」

「ありがとうございます。優香もとても似合っていますよ」

「あ、ありがとうございます」

 兄として、これくらいのことは言っておかなければな。


 そんな訳で、初日から遅刻する訳にも行かないので、少し早めに家を出た。

「優斗、始業式終わったら、一度、合流しましょう。この世界についてまだ話せてないことも少しあるし」

「了解」

「兄さん、何を話しているんですか?」

「ちょ、ちょっとした世間話だよ」

「そうですか」

 そう言って、俺をジト目で見る。

 優香はあまり信じていないようだ。


 そうこうしている内に、学校に着いた。

 ちなみに、設定では入学式は始業式の前日に行われたようだ。

 そして、俺と明日香は職員室へ、優香は一年生の教室へ向かった。

 俺は二年三組で、担任の席にあいさつに行った。

「中村優斗です。これからよろしくお願いします」

「よろしく。私は担任の中西里美です」

 年齢は四十代くらいで、優しそうな女性だ。

「それにしても、君はお父さんとお母さんによく似ているね」

「え?」

 中西先生と俺の両親は知り合いっていう設定なのか。

「あれ、聞いていないのかい?私は君の両親と高校からの付き合いなんだよ」

「そうだったんですか」

「うん。確か、神崎明日香さんだっけ?あの子の両親も私たちと高校からの付き合いだよ」

「そ、そうですか」

 明日香って設定上、両親がいないんじゃ……

「とりあえず、時間まで職員室にいるといい」

「はい」

 

 それから数分後、俺は先生と教室に向かった。

「私が名前を呼ぶまで、廊下で待っていてくれ」

「は、はい」

「緊張せずに楽にね」

 そう言って、教室へ入った。

 気配りの利くいい先生だな。

 よし、緊張せずにしっかりと自己紹介をするんだ!

 そんなことを考えていると、自分の名前が呼ばれ、教室に入る。

「な、中村優斗です。これからよろしくお願いします!」

 すると、クラスからは拍手で迎えられた。

 何とかクラスでやっていけそうだな。

「質問タイムとかはとらないから、質問がある生徒は各自でするように」

 その後は、簡単な連絡等をし、体育館に移動した。

 

 始業式が終わり、その後は各自解散となった。

 やはり、どこの学校も始業式はかったるいもので、校長の長々とした話を永遠と聞かされた……

 俺はクラスメイトからの質問を受ける間もなく、明日香に連絡し、屋上に行った。


 しばらく屋上で待っていると、明日香が来た。

「すいません、お待たせして」

「そんなに待っていないから大丈夫だよ」

「そうですか。それは良かったです」

「それで、話って?」

「私、うっかりしてて、この世界で生きていくうえで、最も重要なことを伝え忘れていました」

 内心で、何で一番重要なこと伝え忘れるんだよと、ツッコミを入れつつ話を聞く。

 さすがに朝からあんなことがあったんだ、気持ち的に疲れて声に出してツッコミを入れる気にならない……

「最も重要なことって?」

「実は……三年生に進級するまでに婚約者を作らないと、この世界は滅亡します!」

「……え?」

 こうして、俺の波乱万丈の学園ラブコメが始まったのであった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

属性は何を選択すればお嫁さんにしてくれますか? カズシ @kazushi12514

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ