ハッピーエンド
ゆらゆらと揺られてどこかへと連れて行かれる。
食べられなくてもなにかされるかも、どうしてあんなことを、とかそういった思考だけがくるくると回った。
「リリィ、ごめんなさい。ごめんなさい……」
「どうして謝るの?」
「わたしがリリィにしたことは許されないことだから。痛かったし怖かったでしょう?わたしを嫌いになったでしょう?」
「私がサラを嫌いになるわけないじゃない。こんなにも愛してるのに。サラのやることはなんだって受け入れるわ」
軽いキスが落とされる。甘さが一瞬だけ感じられた。苦い気持ちが中和されてしまうかのような。
リリィがそう言ったってわたしのしたことは許されないことだ。帰ったら、父にすべて打ち明けて、それ相応の罰を受けなければいけない。
「は?」
リリィから声が漏れる。それは冷たい響きを持っていた。周りの温度がどんどん下がっていくような気さえする。
「ねえサラ。私が好き?」
「えっ、うん、好きだよ」
「そうそれなら、私とずっと一緒にいたいよね?」
あめ玉は不安になるような色合いをしている。
ゆっくりとリリィは口を開く。
「ねえ、サラ。一緒に、」
がくん、とリリィは膝から崩れ落ちる。わたしは投げ出されて、地面へと叩きつけられた。腕から落ちたせいかぎりぎりと痛む。リリィを見ると、あめ玉の色が暗くなり、膝立ちで両手をだらんと降ろして止まっている。動かない。
「リリィ?」
「…………」
いきていなかった。
研究してるって言ったのに、どうしてわたしを置いていくの。寿命を延ばせるはずでしょう、記憶を維持できるはずでしょう。なぜ。
固くなりつつあるリリィの腕を、足を、胴体を、食べる。不思議と気持ち悪さは浮かばず、すんなりと胃の中へと収まった。まるで彼女と、リリィと一体化していくようだった。
残った頭を抱き抱える。
「ねぇリリィ、ずっと一緒よ。わたしもすぐにいくわ」
頭を抱き抱えて、廊下へと出る。目についた一番長いガラス片を手に持つ。
「リリィ、愛してる」
ガラス片を思い切り首に突き刺した。
わたしの砂糖少女 武田修一 @syu00123
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