タロット・カード~エピローグ~

エピローグ


―――


『愚者』には続きがある。



『愚者』は本来の自分、本当の自分のスタート地点に戻ろうとしているのだ。


 彼は崖の上から未来を見据える。

 青い空と白い雲は、新しいスタートをきる彼を応援しているかのように輝いていた。


 そして白い薔薇を大事そうに抱えながら、彼は静かに飛び立った。



『愚者』が本当の自分のスタート地点に戻れたのかどうかは、誰も知らない……





――


「いらっしゃいませ~!」

「ビール」

「かしこまりました。お一人ですか?」

「いや、待ち合わせなんだ。竹中っていう奴なんだが……」


「おぉ~!蒼井!遅いよ、待ちくたびれたじゃないかよ~。あら、百合ちゃん。ちょうど良かった。」

「何ですか?」

「紹介するよ。俺の高校の頃の同級生で、一番の出世頭の蒼井蓮。で、こっちがここの店の看板娘の百合ちゃん。君たち気が合いそうだから呼んだんだ。」

「竹中さん!私は看板娘じゃありませんっていつも言ってるでしょ!」

「はいはい。おっ!お二人さん、なかなかお似合いだなぁ。」

「もう竹中さんったら……。あ、ごめんなさい!騒がしかったですよね。」

「いや、あいつの酒癖の悪さには慣れてる。」


「改めまして自己紹介しますね。藍沢百合といいます。常連の皆さん、ほとんどの方が百合ちゃんって呼ぶんです。気軽に呼んで下さい。あ、呼び捨てでも構いませんよ。」

「じゃあ……お言葉に甘えて。百合はアルバイト?」

「いえ。ついこの間正社員になったばかりですけど、歴は長いですよ。蒼井さんは……竹中さんと同じ会社にお勤めですか?」

「いや俺は大学の法医学の教授だ。」

「へぇ~!大学の教授さんなんですか。法医学とかよくわからないですけど、蒼井さんみたいな人から教えて貰えるなら、毎日でも通っちゃいそう。」

「さすがに毎日講義は無理だな。」


「ふふふ。……ねぇ、手を出して。」

「?」

「はじめましての握手です。貴方の事もっと知りたくなっちゃいました。」

「……俺もだ。」


 店の片隅でいつまでも手を離さないでいる二人。

 その姿はまるで何百年もの間離れていた者同士が、やっと出逢えたかのような雰囲気を纏っていた。




 ――彼らの本当のスタート地点はきっとここから始まる――





   ~~~THE END~~~



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