第3話 前編 不明な青年グラン


日が地平線に沈み、外が暗闇に覆われる。


向こうとは違って電気の灯りが一つもないこの世界では、驚くほど月が輝きを放っていた。


森の近くに小さくそびえ立つ一軒の小さな家。


その羊飼いの家は普段、誰もいないかのように静かなのだが、一人の異世界の男によりまるで祭りのように賑わっていた。



「いやぁ、すみません!こんなにご馳走してもらって」


「いえいえ、どうせこんなときしかご馳走は出せませんので、遠慮なくお食べください…」



珍しく謙遜するシュンに、家の主である老夫婦が答える。



「それにしても、よくお食べになりますね。そちらの世界では、みなさんそのようにたくさん食べれるのでしょうか」


「えっ?


あぁいや。俺半日くらい何も食べてなくて、めちゃくちゃ腹減ってたんす」



シュンは食べるのを一時中断して答えるが、彼が食べている量は、既に成人男性が食べる量の四倍を越えている。


彼は自覚していない、厄介なタイプの大食いなのだ。



「そういえば、二人も魔法を使えるんすか?」


「もちろん使えますよ。ただ、歳をとるとマナが上手く回らなくなるので、小さな魔法しか出せませんが」


「マナ?」


「魔法を使うのに必要なエネルギーの事だよ」



シュンの疑問に静かだったグランが答える。



「お?さすが俺の先生、やっぱ詳しいっすね!」


「…」



シュンがグランを会話に巻き込むため、調子に乗せようとするが、グランは何故か反対に静かになってしまう。



「シュンさん。グランが先生というのは…」


「え?あぁ俺、明日からこいつに魔法教えてもらうんすよ」



それを聞くと、どういうわけか老夫婦の表情も暗くなる。



「…あれ、なんか不味かったすか?」


「シュンさん、魔法は私が教えますゆえ、グランには…」


「いいよ、おじいちゃん」



老夫婦の一人の話を、グランが遮る。



「シュンを無理矢理こっちに連れてきたのは僕だから、僕が教えるよ。


それにおじいちゃんは魔法使える歳じゃないじゃん」


「…わかった」



グランと老夫婦の不思議な会話。

シュンはそれを全く理解できないままただ聞いていた。

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異世界チート物語 ダイゴロウ @DAIGORO_

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