隕石がぶつかる

八坂ハジメ

最後の5分間

―――地球に隕石が衝突するまで、あと5分。


なんてありふれた世界の終末、最期の瞬間。

物語で幾度となく使い古されたボロボロの典型。


それゆえに、これを聞いているあなたたちはわたしたちに見向きもしない。

だからこそ知ってほしい。わたしたちの気持ちを。消えることの辛さを。


***


一つの惑星が消える。そんなとき、私と彼は隣り合ってひたすらとある目的地に向かっていた。

彼というのは同じ場所で生まれた―――まあ、兄のようなものだ。

周りには他にも沢山家族や友達がいて、これから散っていくというのにわたしはあまり寂しさを感じなかった。

だけど、少しだけ怖かった。


「ねえ、お兄ちゃん。わたしはあんまり死にたくないなあ」


「……仕方ないさ。そういう運命なんだ」


「周りの人はみんな嫌じゃないのかな」


「嫌に決まってるさ。だからこうやって少しでも悲しくならないように一緒に行くんだ」


「そっかあ……」


仕方ない。仕方ないけれど。もっとみんなと過ごしたかったなあ、なんて。

……我儘かな。


そうこうしているうちに目的地が見えてきた。


地球に隕石が衝突するまで、あと10秒。

ごめんね見たこともない人たち、怖いだろうけど。


「ぶつかる私たちの方だって痛いんだから、我慢してね」


私たちは、全速力で地球の胸に飛び込んでいった。


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隕石がぶつかる 八坂ハジメ @spart819

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