月下二人
あらうさ( ´Å`)
欠片の中の一物語
「そんな………」
「あなたが私を憎んでるのは知っていました」
信じられない。
「何で………」
「それでも私はあなたが好きでした」
夜空に一陣の桜が舞う。
「決まっていたのですよ、こうなる事は。あなたと私が出会ったその時に」
赤髪の少年は声を押し殺して。
「なぜ黙っていた」
「話したらあなたは止めるでしょう?これでいいのです」
白髪の少女は遠くを見る。
「今宵はいい空模様。この世界から去るにはいい日和ね」
「行くな」
白髪の少女は儚く笑う。
「私が死ねばすべて解決する」
そして崖の上から飛び降りる。
「まっ」
赤髪の少年もすぐ後を追いかけ、飛び降りる!
「………!何で!」
少年は少女を強く抱きしめる。
「あなたまで死んでしまったら!」
「お前一人だけ行かせるなら、こっちのほうがいい」
「あなたは馬鹿です」
「ああ、俺は大馬鹿さ」
白髪の少女は赤髪の少年を強く抱きしめる。
(わたしはどうなってもいい。なんとか少年を助けなければ!)
強く想う。
その時、少年の胸元が光った。小さな欠片が瞬いている。
「この欠片は………『全ての流れをあやつるもの』、おひさまのばんそうこの………!」
少女は強く念じる。
重力の流れが中和され、二人はゆっくりと崖下に降り立つ。
赤髪の少年はぽかり、と白髪の少女の頭をはたく。
「痛た」
「お前は全然賢くねえ。馬鹿だ」
「はい、大馬鹿です」
少女は泣き笑う。
赤髪の少年は何も言わず黙って白髪の少女を抱きしめる。
そんな二人を赤い月は赤々と照らしていた。
月下二人 あらうさ( ´Å`) @arausa
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