カーテンコール

やがて幕が再び上がる。

役者たちが手をつなぎ出てくるのを拍手で迎える。

やがて役者たちがわきにそれ中央から深山翼が登場する。

会場からざわざわとした声が聞こえてくる。

「翼さーん」と言っているのは矢沢だけである。


「本日はご来場誠にありがとうございます。この脚本を作ったのは私の友達で先日亡くなった辻さんです。ご存知の方もいるかと思いますが私の親友山口美香は辻さんの恋人で昨年がんのため亡くなりました。この脚本は辻さんが美香のために作ったものでもあります。それを皆さんに知っていただきたいと思い舞台に立たせていただきました」


「みなさんが不思議におもったヒロインに捧げる曲がすべての答えなんです。

この曲は辻さんが作った曲です。主線を妨げる伏線正直いらないと思うんですけどそれが辻さんのメッセージでした。

ピアノの指には番号が付いています。その番号通りにabcとアルファベットを並べていくと文章を隠すことができます。そして伏線の指の番号にアルファベットを置き換えると「I L O VE YOU」つまり「アイラブユー」という文章が浮かんできます。

つまり美香に「愛している」と伝えていたんです。」


「お願いします」と翼がいうとひかるピアノの前に座わり伏線だけを演奏し始めた。

主線を妨害していた伏線が主線を取り除くと実に美しい音となって聞こえてきた。


古くはバッハも使ったという暗号だがこれほどまでに美しい暗号があるであろうか。

「美香はまだ売れていないころ私が劇場から帰るときに戸惑っていたら主演女優なのに舞台の上から飛び降りて「大丈夫?」といって私を導いてくれた。彼女は私に普通に接してくれた。でもがんになって闘病しながら舞台に立ち続けた。辻さんは美香が舞台に立ち続けることで「美香の命を削ってる」と罪悪感を持ってしまった。でも、だれも悪くないんです。辻さんが「深山、すまない」なんて私に言い残して。。。私は辻さんの事をこれっぽっちも恨んでないのに。。。」

翼の涙が客の涙を誘う。


「でも私は見ての通り目が見えないけどそれでも。、、、、それでも美香や辻さんの思いを胸に、、、、前を向いて生きていきます。。。」


そういって深山翼は頭を下げた。


ぽつりぽつりと拍手が起こりそれが大きな波になる。

止まることのない拍手はおそらく天国とやらにも届いたことであろう。


カーテンコールはやむことはなかった。


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カーテンコール 若狭屋 真夏(九代目) @wakasaya

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