幕は上がる
辻義孝の司法解剖が終了し死因が「急性心筋梗塞」だと判明した。ここ一年寝食を忘れ働いたためだとされた。これで事件ではないことは決まった。
辻の死を受けて劇団は再びS県のホールでの上演をすることを決めた。
前は小ホールでの上演だったが大ホールへと移っての上演となった。
ここには大岡と母康子妻理子そして娘の恵と直希とみずきの家族全員がいた。
あと家族ではないが矢島がいた。
招待状が翼から届いたからだ。しかし肝心の翼の姿が見えなかった。
会場は満員御礼のまま、ゆっくりと幕が上がる。
ヒロインが事故により失意の中売れない作曲家の曲がどこからか流れてくる。
その曲の美しさに思わず声を出して歌いだすヒロイン。
お互いが才能に気づきやがて恋に落ちる。
しかしヒロインの病気が日々悪くなっていく、そして作曲家が彼女を元気づけるために寝食を忘れて曲を作る。
そして曲を作り上げ彼女の前で演奏しようとしたその時ヒロインはとわの眠りに入る。
そして作曲家は涙を流しながら彼女の前で曲を引き出す。
ありきたりな悲劇でありながら辻の練りに練った脚本によって悲しく涙を流す客が多い。かくゆう大岡も涙が流れている。それどころか鼻水が止まらなくなりポケットを探す始末だ。
最後に作曲家は「君の声は残すことはできないがこの曲で君への思いを残すことはできるであろう」といって上を見て幕が下りる。
割れんばかりの拍手と涙が会場を包み込む。
そしてゆっくりと幕が下りていく。
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