不思議な曲

みずきや直希が考えている同じことを翼も考えていた。

翼も曲の存在は知っていた。辻からは「あれは俺が作曲したんだよ」と聞いたことがあった。

そのことを考えていた時には辻の死がマスコミに公表され劇団員も取り調べを受けていた。

そのため舞台は中止となり大騒ぎとなっていた。

その日翼はタクシーでホールに向かった。

白杖を持った翼を知っている人はたくさんいてタクシーから降りると劇団の人間が走ってきた。

「深山さん、警察から辻さんの事でいろいろ聞かれたんですって?」と言ってきたのは古株の吉野ひかるだった。大道具の吉野一平とは夫婦であり深山の事を知っている。美香の亡きあと看板女優として劇団員のお母さんのように接している


「ねえ、ひかるさん、一平さん今度の舞台の事で教えてほしいことがあるの」

といって二人に話しかけた。


ひかるは今回の舞台で車いすのヒロインの役をやっている。

「ねえ、ひかるさん今回の舞台って亡くなった辻さんがつくったのよね?」

「ええ、辻さんはまるで何かにとりつかれたみたいだったわ。普段は優しくていい人なのに今回の舞台では厳しかったわ。まあ、おかげでヒットしたんだけどね」

「辻さんって作曲できるの?」

「私は辻さんが曲を作ったなんて聞いたことないけど。。ねぇ?」と一平に振った。

「辻君は昔はギターとかやってたらしいけど舞台の曲はいつもクラシックに詳しい人に任せてたよ。でも。。」

「でも?」ひかるは聞いた

「辻君去年美香ちゃんが亡くなったとき落ち込んでさ、「一周忌までには「あいつのための脚本をかく」っていってたよ」


「ひかるさん、舞台で曲演奏してもらえる?」翼はきいた

「ええいいわよ。なんだかレクイエムみたいで、、泣けちゃうけど。。」


舞台はそのままになっている。ピアノが一台置いてありそこで主人公が亡きヒロインに曲をささげる。


ひかるはピアノのふたをあけると楽譜を確認して演奏し始めた。


主線では暗く悲しい曲なのにまるでそれを邪魔するようにチャイムがなるような感じの音が一定の間隔で鳴り主線を邪魔している。


それが何度か繰り返されている。そして曲は終わった。


翼はその曲を聞いて何かを思ったらしい。


頬から涙がつたう



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