割烹「に志むら」

西村貢は割烹「に志むら」の主人で大岡の同級生である。翼に話を聞いた次の夜大岡は矢島と一緒にこの店で飲んでいた。

矢島は疲れて飲んだのですぐに高いびきをかいている。

大岡はかたずけをしている西村に向かって「なあ。」と呼び掛けて「俺より先に死ぬなよ」といった。

「なんだよ、けいちゃん気持ちわりいな」と返した。

「そんなに今のヤマは大変なのか?」

「そんなんじゃないよ。なんだか昔のことを思い出してさ。」

「京子の事か?」

「ああ。」

「京子だってけいちゃんを応援しててくれるって」

京子の事は別の作品で書こうとおもう。

「強いと思って刑事なんかやってきたが所詮生身の人間だったって毎日痛感させられるよ」

西村の携帯が鳴った、「あ、直ちゃん、親父さんなら今店にいるよ。迎えに来てくれるの?助かるよ、じゃあ、待ってるから。」

「おい、今の電話直希からか?」直希は圭司の長男で大学生だ。

「息子に迎えに来てもらえるなんてけいちゃんは幸せ者だよ」

そういって10分後に直希はガールフレンドの高原みずきを連れて店にやってきた。

「おい、またみずきちゃんと遊んでたのか?」

「そんなわけないだろ?」直希は親に厳しい。

「お父さんお久しぶりです。」とみずきは頭を深々と下げた。

二人とも同じ大学の学生でみずきの父は銀行員そして祖父は圭司の父で元刑事で故人の清隆の上司石黒警視の孫である。

お嬢様生まれの性格のいい女の子で圭司の母康子や妻理子とも仲が良い。

「ところで姉貴から聞いたんだけど昨日舞台を見に行ったんだって?」

「違う。仕事でいったんだ」

「なんだっていいだろ? でどうだった?あの舞台」

「見てないよ」

「私たちもチケットが取れたら見に行こうとしてたんですよ。すごい話題で」

「みずきちゃん知ってるの?」圭司はみずきに聞いた

「はい、あらすじは車いすに乗った女の子が作曲家と恋に落ちてその女の子が歌手を目指すんですけど。でもでも女の子の病気が悪くなっちゃって作曲家は彼女のために必死に新曲を書くんですけど間に合わなくって。。。もう。思い出しただけでも、、泣けて、、、来ちゃって。。。。」

この会話だけでもみずきがいかに純粋かわかる。

「まさしくプラトニックラブ。俺たちみたいだな」と直希は威張っている。

「でもさ作曲家が作った曲を演奏するんだけど、その曲がなんか変なんだよな」

「変?」直希の言葉に圭司が反応する。

「ユーチューブで聞いたけどなんか暗くも明るくもなく励ますっていう曲でもないんだよな」

「私もそう思った。私も子供のころからクラシックをたくさん聞いてきたんですけどなじみがない感じでした。」

みずきはさすがお嬢様である。

「ところでお父さん、うちの父がおじいちゃんの事でまたいろいろお話したいっていってました。」

「御父上にはお時間が取れたらお伺いいたしますと伝えておいてください」といって圭司は逃げるように自宅に帰った。




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