県警にて

県警まで車で普段なら20分かかるが今日は舞台があるため道は混んでいた。

結局県警まで1時間かかってしまった。

あくまで任意であり事件と判断していないので取調室は使わず会議室が空いていたのでそこを使うことにした。

大岡は翼を椅子に座らせて話し始めた。

「辻さんが倒れているのを発見したのは役者の金田健一さんでして、なんでも昨日午後7時30分頃、金田さん直前に辻さんからの着信があるのに気づき電話したが電話がつながらず舞台関係者から辻さんがホテルに戻ったことを知って辻さんの部屋を訪ねてみても反応がない。ホテルをさがしてみても見当たらないためホテルマンにお願いして辻さんの部屋を開けてもらったらそこに辻さんが倒れて居まして。。。」

「その金田さんが見つけた時に辻さんはもうなくなっていました?」

「いえ、意識はあったそうです。金田さんとホテルマンの証言ですが「深山。すまない」とおっしゃったそうで。。。それで深山さんからお話を伺おうと思いお邪魔いたしました。」

「そうですか」

「失礼ですが辻さんとのご関係は?。。いや、刑事ってのは本当に失礼な生き物で申し訳ありません」

「いえ、いいんですよ。辻さんとは友達です。もっと詳しく言えば「友達の恋人」だった人です」

「話せる範囲で結構ですので。。。突然のお知らせで驚かせておいてすいません」


「私と友達の美香と知り合ったのは私がまだ東京にいたころ、かれこれ5年前になると思いますけど。」

「私は演劇が好きでまだ人気も無かった辻さんのいた劇団の舞台に通うように見てました。その時の看板女優が山口美香さんです。」

「ほう」

「なにしろ小さな劇場でお客さんも少なかったですしこの白杖が彼女の目にはすぐ見えたらしいんです。

それで舞台終わりに私が狭い劇場から出るときに困っていたら舞台から降りてきて私の手を取ってくれたのが彼女です」

「そうなんですか。で彼女の恋人が辻さんだったと?」

「ええ、でも彼女去年がんで亡くなっちゃって。。。皮肉にも劇団は彼女にがんが見つかってそれでも舞台に立ち続けてから人気が出てきてこれからだって時に。」

いかに大岡が刑事とはいえこういう話を聞くと自分の娘がそうだったらと思ってしまって涙もろくなってしまう。54歳になるといろいろなものが心の中に溜まってそれが涙を流させる。


空気が重くよどんできているときだった。急にぷーんと甘い匂いが香ってきた。

「あの。これ今買ってきたんですけどどうですか?」と矢島がたい焼きとお茶をもってやってきた

「矢島」と大岡はあきれたがすこしは翼の心を軽くさせた。

時間が遅くなったため矢島が運転し翼を自宅まで送った。

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