私のお弁当タベテヨ

第1話ヒツヨウとしてヨ

「これ、今日のお弁当ね」

「おっサンキュー」

「うん」

私が渡したお弁当に一切目も向けず机の横にかけるのを私は、黙ってみる。

私が弁当を渡したりょうちゃんは最近彼女が出来た。

幼稚園から一緒に過ごしてきたから私は、少し心配している。

その理由は・・・

「おっはよ~」

その声の主はりょうちゃんの彼女の小上雲母だ。

小上は口調も見た目もチャラく、ギャルと言われるものだと認識している。

バスケ部エースのりょうちゃんは小上さんとその取り巻きに言い寄られ付き合ったに決まってる。

今だって小上さんは仲間の人たちときゃっきゃきゃっきゃと騒いでいる。

それを私は横目ですぐに視線を逸らす。

一瞬小上と目が合った気がしたからだ。

その小上はりょうちゃん方へと歩いて行く。

私は机の上に置いてある単語帳から目をそらしりょうちゃんの方を見る。

「涼介おっはよ~」

「雲母おはよう。シャンプー変えた」

「よく気付いたね。それにさ、見て見てこのネイルかわいいっしょ」

「ピンクに星を散らばめているんだね。似合ってるよ」

「ありがと~、それでねそれでね~」

イチャイチャしながら話す様子から目をすらし単語帳に視線を戻す。

(どうしてりょうちゃんはあんな子選んだんだろう。私みたいな黒髪のメガネかけたおさげは嫌いなのかな)

全く頭に入ってこない単語を見つめながらそんな事を思っていると、気になる会話が聞こえてくる。

「また弁当あんじゃん。わっちが学食だから一緒に食べ行こうって言ったのに~」

「ごめん。毎日紗雪が作ってくれるから」

「じゃあわっちが今断ってやるよ」

「えっ」

涼介は小上の言葉について行けず何も言えなかったうちに、小上が紗雪の方向へ歩いてくる。

小上が歩いてきていることに気が付いているが私は一向に単語帳から顔を上げない。

いや、上げれないという方が正しいのかもしれない、なぜなら小上はクラスの上位カースト、紗雪は下位とは言わないがそこまで高くはない。

断れない事は紗雪自身分かっているから小上の方を見ようをしないのだ。

(こっちに来ないで、私の生きがいを奪いに来ないで)

そんな事を思っていると肩を叩かれる。

「ねぇ~新堂さん」

「はっはい」

「ちょっと頼みごとがあるんだけど」

「なんですか」

分かり切った頼みごとに私は少しの抵抗を見せる。

だが、そんな事は無駄に終わる。

「わっちさ~涼介と昼食べたいからさ、明日からでいいから弁当作ってくんの止めてくんない。それにあんたと違ってわっちら、かれかのの関係だし~」

「でも、りょうちゃんのお母さんからお弁当作るためのお金貰ってるし・・・」

「じゃあ好都合じゃん。そのお金でお昼食べればいいだし」

「でも・・・」

「でも、なに?」

「なんでもないです」

「っじゃそう言う事だから、よろしくね~」

何も出来ず私は屈してしまった。

本当は反抗したかったのにも関わらず何も出来なかった自分に空しさを覚えながら、机の上に置かれた単語帳を眺めていた。




次の日から弁当ではなく、毎日500円を登校時に手渡した。

さすがに教室で渡すとまた難癖付けられると思ったからだ。

その為、私の登校時間は早まりバスケ部の朝練の時間になった。

そのせいで私はりょうちゃんと登校するようになった事が、クラスでうわさされるようになった。

私はどうも思っていなかったのだが、りょうちゃんから避けるように言われた。

きっと小上さんが頼んだ事なのだろう。

少し悲しみを覚えたがりょうちゃんに被害が行くのだけは避けたかった私はすぐに了承した。

そのためお金を渡すのは朝のホームルーム前になってしまい、周りの視線が痛かった。

だけど、りょうちゃんがお昼を食べるためには仕方がない事だった。

だが、私が近づくことでさえ小上さんたちは嫌がった。

「ねぇ、新堂さん。涼っちに近づくのやめてもれるかな。きらっち嫌がってるんだよね~」

「でも、お金渡さないとお昼食べれないし・・・」

「そんなの涼っちに全部渡せばいいじゃん。また涼っちのお母さんがっていうのか~」

「でも、昔からそうしてきたし頼まれてるし」

私の言葉に対して彼女たちはニヤニヤと笑う。

「もう高校二なんだよ~あんたが金の管理する必要ねぇ~じゃん」

「でも・・・でも・・・」

「何も言う事ないならお金渡しな。涼っちに渡しとくからさ」

反抗したかったでも、今の私はクラスの女子から少しはぶられていることを理解していた。

(もしこれ以上はぶられてしまったら、りょうちゃんに心配させてしまうかもしれない)

その考えから封筒を彼女たちに渡してしまった。

「そこそこ入ってんじゃん。これだけ入ってて毎日500円とか、かわいそ~」

そう言って笑いながら彼女たちは帰って行った。

また何も出来なかった私は一人で涙を流すしかなかった。




りょうちゃんから全て切り離されてしまってから私は少し学校をズル休みするようになってしまった。

ずっと好きだった男の子から切り離され、近づけばいじめられるという状況に私は病んでしまった。

夜な夜な両親が寝てから私はリスカをしてしまった。

(痛い・・痛い・・・いたい・・・イタイ・・・イタイ、イタイイタイイタイイタイイタイイタイ・・・)

でも、その痛みがなぜかりょうちゃんを感じれるようになってしまった。

いじめられる精神の痛みが肉体に行き、私は少し変わってしまったのかもしれない。

でも、ずっと昔から好きだった子の事を感じれる気がしてリスカはやめることが出来なかった。

季節は夏なのにずっと長袖、体育も長袖、汗を掻けば痛みを感じる。

なのに私は遠い距離にいるりょうちゃんを見て気持ちの高ぶりが抑えることが出来なかった。

(りょうちゃん気づいてないよね。でもね、私は・・・私は・・・ふふふ)




私の学校でのいじめはさらに加速した。

小上さんは何も言ってこないのだが、その取り巻きたちが私に詰め寄ることが多くなった。

勝手なことで難癖をつけてくる。

私は抵抗できず、両親にも相談できず、ただそんな日々が過ぎて行った。

クラスの誰もが気づいているいじめに私はついにりょうちゃんに相談した。

「ねぇ~りょうちゃん」

「どうしたんだ、こんな深夜に」

「クラスの事なんだけど・・・」

話を聞くまでもなく涼介は察することが出来た。

彼女がいつも自分の所に来る時はいつもその取り巻きと紗雪がいないという事に気が付いていた。

でも、そこまで気に止めていなかったが何をしていたのか理解したのだ。

「分かった。雲母たちに言っておくよ」

「だめ、そんな事をしたらまたひどくなっちゃう。だからね、一週間に一日だけ私の家に来て」

「そんな事でいいなら絶対に行くよ」

「ありがとう」

この通話がどんなに深い意味を持っているのか涼介が気づくはずもなかった。




週一で家に来るようになったりょうちゃんは私の事を時間をかけて励ましてくれた。

とっても嬉しくて嬉しくて私は過ちを起こしてしまった。

そう、両腕のリスカ痕を見られてしまった。

さすがの涼介も引いてしまい、その日を境にりょうちゃんは私の家に来なくなった。

私もそれにつれてSNSの裏アカウントを作ってしまった。

私はそのアカウントでリスカを見せてり、かまって欲しそうな事を発信した。

その行動は日に日に多くなり、私の心が休まるのはネットの世界だけになっていた。

現実は誰からも避けられる辛い日々、けれどネットは違った。

同じ境遇のような人と傷を舐め合えるのが、心の支えとなってしまっていたからだ。

『いつもいつもどうして私だけ私だけ』

そんな事を発信して数秒後私にいつも返信をくれる少女から返信が来た。

『今日も私と愚痴りましょ』

その言葉が来たとたん個人の会話に切り替えた。

『いつもいつもありがと。私あなたとリアルで会いたい』

『そう言ってもらえて嬉しい。私も会ってみたかったの』

私達はすぐに日程が決まり、お互いの着ていく服装を送りあった。

私の疲労しきった心がかすかに潤った気がした。




何も無い日曜日唯一心を許せる人に会いに行った。

本当はよろしくないのかもしれない。

だけど、自然と足が進んでしまったのだ。

待ち合わせ場所で待っていると一人の男性が近寄ってきた。

「あの、すいません。紗雪さんですか」

「はいそうですけど。あなたは一体誰ですか」

「本当は分かっているでしょ。こっちに来い」

男の強い力によって私は、何も出来ることなくついて行かされた。

その時点で察していたが、ホテルに連れて行かされた。

何をされるのかは分かっている。

けど、私は少し心が安らいだ。

だって久しぶりに誰かに必要とされたから、だから私はいいと思ってしまった。

だけど、それも少しの間だけだった。

私はその人にヤリ捨てられ、会う事が無くなった。

SNSでもその人から返信が来ることはなった。

その時に気づいたのだ。

いいや気づいていた。

それでもなお、私は少しでも必要とされる場所を見つけたかったのだ。




何事もなく私は泣き続けた。

あくる日もあくる日も、だけど私の気持ちは一切晴れなかった。

なにも私は思わなくなってしまった。

そう言えば世間で特殊な自殺があったらしい。

そんな事を思いながら私はいつぶりなのかも分からない、外の世界に足を踏み入れた。

そのまま私はビルの屋上へやって来た。

もちろんライブ配信をしながら・・・

みんなが心配してくれている。

その事がとても嬉しかった。

配信を見て私のもとに来てくれた人もいる。

だが、誰もがうわべだけで近づこうとはしない。

本心では関わりたくないのだろう。

そんな状況にただただ、私は笑顔でビルの屋上から身を放り投げた。

一瞬の浮遊感を感じ、何も感じなくなった。




ミンナジブンノコトダケ・・・ハハ

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私のお弁当タベテヨ @yunaeru

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