肉が少ない

うすばかのぼせやろう

すき家にて

遂にやった。

しんのゆうしゃとなった。


肉が少ないのである。

すき家の牛丼。並。


牛丼ファンならば一度や二度は遭遇するであろう理不尽な仕打ち。

盛られた肉が少なすぎる。

居酒屋のお通しレベル。


だがしかし・・・

あなた言えますか?

つり銭間違えたレベルじゃない。

「肉が少ない」ですよ。

言えないでしょ?


そこに付け込んで奴らは少なく盛る。

明らかに!故意に!


しかしね。

たかが牛丼。

されど牛丼。


恥ずかしいとか思ってるから奴らは付け込むんですよ!

ええ!言ってやりましたとも!


「肉の量が少ないですよ」


盛った店員は小さい痩せた小娘(推定高校生)。

「§¶〠〓で計ったから間違いないですよ」

(名称忘れた。なんか肉を盛る道具)


いつもこの店。週2回は通っている。

その自分の目で少ないのである。

白いご飯がかなり見えているのである。

ちなみにメニューの写真の並盛は白いご飯が露出しないぐらい肉が盛られている。

そしていつも牛丼を出してくる男子店員はメニューの写真と寸分たがわぬ物を出してくる。


絶対違う。

絶対少ない。


小娘

「じゃー中盛(肉だけ多いやつ)にしてくださいよ」

「そしたら肉増やしますよ」


自分

「違う!今出されたのが既に少ないんだよ!」


小娘

「はー・・・・」

「じゃあ肉増やしましょうか」


そういって半ギレ気味に目の前の丼を持って肉を足した。

頭に来ているからこれ見よがしにとんでもない量を盛ってくるのを期待したが、そこは冷静だった。

突き返された丼はようやくメニューの写真並の「並盛」だった。


その後の不味さったらないこと。

小娘は厨房でガシャンガシャンやってるし。


別途注文した味噌汁も飲まずに会計。

こいつ絶対分かってない。


自分

「さっきの肉は少ないんだよ」


小娘

「§¶〠〓で計ったから間違いないですよ」


自分

「でも少ないんだよ!自分はこの店に週2回以上来ているんだよ!明らかに少ない」


絶対認めようとしない。


自分

「分かった。じゃあゼンショーに問い合わせるから。あなたも自分が正しいと主張するがいい」


凄いですね。

牛丼でこれだけ揉めるとかもうしんのゆうしゃですよ。

あと少しで本物ですよ。


その後、しっかり本社に電話した。

ただのクレームではなく、何が原因で何が悪いのか?

悪意なのか?


そして話し合った末、 以下の妥協点に到達した。

・恐らく悪意でやってない。

・主観が入っている。

・各自が最高の仕事をした結果そうなった。


いきなり到達点を書かれても意味がわからないだろうから説明する。


まず少なく盛るのが体格が小さく細い女性に顕著なこと(別の牛丼店でも起こりうる)。

つまりいつも自分が食べてる量を基準に盛っているのではないか?


元々食が細い痩せた女性が「自分ならこれだけあれば充分」 「これ以上盛ったら残してしまう」というのが例の少ない並盛であると。

盛った本人が適量と思っていても一般男性からしたら全然足りない。

そして一般男性が大体満腹になる量を痩せた女性が完食できるはずもない。


この「食べられる量」の相違が、今回の不幸な事件に繋がったと。

そういう理由に落ち着いたのだ。


またこの理由を軸として考えると、他の至らぬ点も辻褄(つじつま)が合ってくる。


例えば、今回の店には他にトンデモなくツユダクにしてくる店員がいる。

肉の盛り方は悪くないのだがツユダクがハンパ無いのだ。

もうツユダクの域ではない。

リゾットである。


盛った本人にはこのリゾット牛丼が最高なのであろう。

もちろん牛丼好きには、これぐらいのツユダク加減がたまらないと称える者もいるだろう。


でも違う。


ちゃんと白米の味と牛丼にまみれた白米。そして牛肉。

これらを分けて味わうことに意味がある。

リゾットにしてしまっては味が1つになってしまう。


これは永遠のテーマである「カレーをグチャグチャに混ぜて食う派」と「カレーは白米と分けて食う派」の論争に通じるものがあろう。


分かってないのである。


全部一緒にしてしまったら本来、数種類ある風味が1つになってしまう。

そんな食べ方は損だ。

でもグチャグチャ派はそれが最高の食べ方だと思っているのだ。


しかしそんなのは、客が「ツユダク」と言わない限りはやってはいけないことだ。

自分がいかに狭い了見で仕事をしているか自覚してないのである。

更に言えば、この者は「分けて食べる派」を完全否定しているのである。


ただ不幸なことに、これらは全て悪意から起こされた出来事ではない。

むしろ最高の牛丼を出そうとした結果、招かれた不幸なのだ。


そういう訳で本日の牛丼店の店員さんは「主観を入れてはいけない」という重大なテーマを背負う事になった。

自分が最高と思っている事が、他の人にとってはそうではない場合がある。

そしてそうではない場合は最悪の結果を招く事になる。

善意でやったとしても。


これほど皮肉な事があるだろうか?

そしてそれは誰かが勇気を出して言わないと永久に気づかないのだ。

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肉が少ない うすばかのぼせやろう @noboseyarou

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