工作機械習得は一日にしてならず
工業高校には実習目的で様々な機器が置いてある。代表例を挙げるなら前科共通してパソコンがある。
しかしパソコンは普通科高校にも常備してあるだろう。
しかし工業高校では学科によって様々な機器・工具がある。勿論値段も違う。だが普通科高校よりお金がかかっているのはまず間違いないだろう。
俺は機械系の学科に在籍しているため、機械系の学科に置いてある機器しか分からないが、一台当たりおよそ数十万~数百万円の工作機械が設置されている。各種工作機械の説明はここでは省くため簡単にしか言わないが、大体二~三十台設置されている。
因みに通っているとこに置いてある工作機械の最高額はマシニングセンタという工作機械で、お値段は約五千万円。しかもこのマシニングセンタはまだ安いほうだという。
他にも各種測定機器や実験機器、工具なども加わるわけでもう置いてある実習機器全額換算すると軽く億を超えるのだ。
とにかく工業高校は金がかかっています。はい。
そんな一台数十万~数百万する工作機械で工業高校生は基本的な汎用工作機械の使い方を学んでいく。
代表例を一つ挙げよう。
それは、工作機械の王道中の王道『旋盤』だ。
この『旋盤』という工作機械は工業人が扱えて当然であり、尚且つ基本的な工作機械といえるだろう。
この『旋盤』という工作機械はチャックに被切削物を取り付け回転させ、固定したバイトと呼ばれる工具で押し当てて切削加工をする工作機械だ。主に円筒形の工作物を制作するときに用いられる。少し例を挙げるならシャフトやネジといったところだろう。
有名な旋盤工の人はこの汎用旋盤からF1に使用される車両のエンジンバルブを作っているという人もおり、ここまでくると本当に技能が卓越した人になる。
流石にここまでとはいかないが、俺達工業高校生は旋盤の使い方を習得しかつ精度向上を重点的に実習に臨んでいるのだ。
しかし昨今ではプログラムを作成し、それをデータとして送信すれば自動的に機械がやってくれる『NC工作機械』というのが主流になっている。因みに前に挙げたマシニングセンタも『NC工作機械』の中の一つだ。
こちらの機械はプログラムを打ち込めば、こちらが指定した寸法通りに仕上げてくれる優れモノだ。今の製造業の機械加工の大半はこの『NC工作機械』が使用されているだろう。
その中に勿論『NC旋盤』もある。
ここで思う人もいるだろう。
「じゃあ汎用旋盤はおろか他の汎用工作機械の使い方なんて学ばなくとも、NC工作機械の使い方だけ学べばよいのではないか」と。
断言しよう、それは間違いだ。
まず結論を述べると、仕組みをわかってない奴がNC工作機械を操作したところで上手くできない。特にマシントラブルがあった場合その人は普通に戦力外だ。
技術の向上や使い方を学ぶという他にも仕組みを理解するというのも、工業高校生が実習を通おして学ぶべき一つの事項だ。
もう一つ理由があり、それは試作品や一点物を制作する場合はどちらかというと汎用工作機械のほうが使い勝手が良い。
NC工作機械はプログラムを組んでしまえば大量生産が可能なところにメリットがある。しかし試作品や一点物の工作物の為にプログラムを組んで加工を行うのは正直コストが高く、デメリットしかない。
そして工業高校というのは現場で即戦力になれる人材になるように教育しているので、例えば図面を渡されて「これ作ってきて」と頼まれたときに迷わず、そして高精度な工作物が作れるように指導している。
だからこそ私たちは汎用工作機械を主体として実習を行っているのだ。
そしてシビアな寸法にも対応できるように日々自己研鑽にいそしむ。
「ローマは一日にして成らず」という言葉があるが、工作機械にもその言葉が似合うかもしれない。
「工作機械習得は一日にしてならず」
旋盤はおろかフライス盤やボール盤といった各種工作機械の使い方をきちんと覚え、図面通りに指定された寸法にしっかりとおさめられるように学んでいく。
これは工業高校生だけではなく現代の技術を支える技術者が胸に刻んでいることだ。
常に研究を重ね、そして失敗を繰り返しながら様々な事を学んでいく。
工業高校生はそんな現代の技術者の扉を叩こうとして、工作機械を学んでいくのだ。
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