工業高校学習物語 専門教科編

 前の話でも述べた通り、工業高校は普通教科のほかに専門教科を学んでいく。というよりも実業高校というのは各分野になぞった専門教科を学んでいく。


 俺は工業高校機械系学科に在籍しているために、その話しかできないがとにかく多くの専門教科を学び、それらを覚える必要がある。


 だが――それが難しいのだ。


 正直理数分野が強い人は大丈夫かもしれないが、文系が得意な人にとっては覚えるのが苦痛でしかない程難しい。


 実際俺自身も地頭が文系で入学したての頃から今にかけて覚えていくのに様々な苦労を要した。


 しかしそんな俺も工業高校で学んでいくうちに、理数系が得意になったという訳ではないが強くなった。だからこそ工業高校受験予定の文系中学生諸君は安心して欲しい。


 工業高校に入学すれば、理数系は――強くなる。


 ……話がそれてしまったので軌道修正をしよう。


 とにかく工業高校で学ぶ専門教科というのは、覚えることが多く、計算式も複雑なものが多くあり結構難しいのだ。


 ここでいくつか機械系学科で学ぶ教科を紹介しよう。


 まず紹介するのは機械系学科の基礎中の基礎教科「機械工作」だ。


 この「機械工作」という教科では主に、各種加工法の理論や機械材料の性質といった機械系学科在籍の工業高校生が学ぶべき基礎知識が集約してある教科だ。


 正直言ってこの教科は機械系学科の生徒にとっては覚えていかなければならない事ばかりだ。


 例えば、旋盤を扱う時にどのような回転速度と送り速度で加工すれば綺麗に仕上がり、また工具寿命が長くなるかという計算の方法をこの教科で学ぶ。


 この旋盤で使われる切削工具――バイトというが、このバイトの刃がチップになっているバイトがある。このチップは消耗品であり、安くても一つ六百円する。だからこそ工具寿命を延ばし長く使用するためには計算をする。


 そしてその条件には機械材料も条件の一つに入っており、この材料の性質・特徴を熟知しない限りよい加工条件が出ない。


 しかも材料は多くの種類が存在し、また鉄やその他の金属の中にも硬さや炭素含有量等が少し違うだけで名称と共に違う金属になる。だからこそ多くの知識をこの「機械工作」で学んでいく。


 次に紹介するのは設計技術者必須の教養「機械設計」だ。


 この「機械設計」というのはその名の通り、設計をするにあたってどういう力が加わっているという計算から、摩擦、滑り、そして歯車の歯数やピッチなど、これだけではないが、機械的要因の数々を計算方法や名称等を学んでいく。


 とにかくこの教科は計算が多いので、数学や計算が好きという人にとっては大好物かもしれない教科だが、俺自身は文系なのでとにかく計算が覚えられない。


 様々な公式が学ぶたびに増えていき、そして単位換算等もそこに加わってくるので混乱してくる。しまいには学んだ公式すべてを使用しないと答えが求まらない問題があり、文系学生にとって頭を抱えるほど難しいのだ。


 最後に紹介するのは俺の中でも一番の曲者だと感じさせた教科「原動機」だ。


 この教科はその名の通り、車や飛行機等に使用されているエンジンや、浄水場等に使用されているポンプやブロワ、そして各家庭に置いてあるであろう冷蔵庫に関するものまで、その物を動かす「原動機」を学んでいく。


 俺は言いたい、この教科は曲者だと。


 俺は今高校三年生で、「原動機」を授業として行ったのは去年の高校二年生の時だ。


 この「原動機」という教科の使われる公式はとにかくややこしくて難しい。


 俺が最初にやった分野は簡単に言ってしまうと「流体力学」だった。


 とにかく覚える公式が非常に覚えにくく、更に摩擦によるエネルギー損失や管の形などによって数値――損失係数が変わってくるので覚える事柄がありすぎて難しい。


 俺は「原動機」の時間の時はいつも「ここは大学なのか?」と何度も思った事だ。


 これら三つを例として挙げたが、これは機械系学科で履修するであろうであり、電気・電子学科や化学系学科、建築系学科によって履修する内容は違い、またその学科で学ぶ専門教科も難しいものがある。


 勉強したくないから工業高校を第一志望に見据えている中学生に言いたい。


 専門教科は――難しい。


 普通科高校でも難しい教科はあると思うが、工業高校には工業高校なりの難しさがあるという事を知っていただきたいと思った。

 

 

 

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