近接主流の時代に遠距離使えば最強じゃね?

@TheScarlet

一章 前途多難

月曜日の深夜11時。とあるマンションの一室で、

「はぁ。とうとうあと一週間かよ・・・」

こう溜息まじりに言い放ったのは俺、赤紅 清都(せっく せいと)である。

つい先月、高校を卒業し来週からは晴れて社蓄の仲間入りだ。業務内容はさほど悪くない。だが、俺は働きたくないのだ。業務内容など関係ない。ただ大好きなシューティングゲーム(主にFPSと呼ばれる部類)をひたすらやっていたい。それ以外は特に望まない。だから、頼む。時よ、このまま止まれ!!なんて考えつつ、晩飯を何にするかを考えていた。だが生憎、俺は料理はお世辞でも上手くない。だから先月まで二年かけて頑張って貯めていたバイト代でコンビニ弁当などを買い、生き延びていた。

「さて、買いに行くか」

コンビニまでの距離はさほど遠くない。歩いて行って、10分もあればつく距離にある。ジャージに着替え、来週からの絶望的なスケジュールを携帯で確認しながら歩き始める。この時間にもなると歩いているのは俺くらいだ。仕事のことばかり考えて、独り言を呟いても怪しい目で見られることはない。だが、どこか言葉にならないような恐怖も感じつつもある。

歩いて数分経った頃にようやく気付いた。やべ、財布忘れた。その瞬間、ドンッと大きな音と共に何かと衝突した。今まで仕事のことばかり考えていたため、ほかのことに気が回っていなかった。人にぶつかったと思い込んでいた俺は

「すいません。お怪我は・・・」

と言いかけたその時。自分でもわかった。血の気が引いいていくのを、確かに、感じ取った。俺がぶつかったのは人間、ではなかった。よくあるRPGに出てくるゴブリンそのものが目の前にいた。

「△◯×◯◇、××◯◇◯×!!」

なにかを必死に伝えようとしていたが、何を話ているのかわからない。いや、それどころじゃない。俺は周りを凝視した。俺はいつの間にか、俺がいたはずの街ではない、別の街にいるのだ。周りの建物はレンガを積み上げたような造りになっており、深夜に歩いていたはずなのに空は快晴、真っ直ぐ見上げた先にはいかにも王様が住んでいる立派な城まである。

これはいわゆる異世界にワープしたということか?だとしたら、何が引き金になったんだ?まさか、勇者として召喚されたのか?いや、特に知識も身体能力も普通の俺が選ばれるわけ・・・など色々なことを考えていると後ろからポンッと、肩を叩かれた。振り返ると、鎧を身にまとった騎士らしき二人がそこにいた。

「君、少し話があるのだが。ついてきてもらえるかな?」

あ、はい、なんか詰んだ気がする。いきなりこの世界の警察に捕まるとかお先真っ暗よ。前途多難もいいところだよ。下らない事を考えながらも俺は、騎士二人に挟まれながら駐屯所のようなところに連れていかれた。あぁ、もう駄目だ。

そう思った矢先に思いがけない言葉をかけられた。

「君、ギルドに入ってはくれんかね?」

状況が全く頭に入ってきていない俺に、さらに理解不能な言葉をかける騎士。この会話が後にこの世界の伝説として語り継がれるのは、そう遠くない未来の話であると、まだ誰も知る由もない。

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