第2話

「ピキー!!

ボクは、わるいスライムじゃないよ!!」


水色のスライムが、話しかけてきた。

朝のお散歩の道での事だった。


「おはよう~スライムちゃん♪」


私の隣のおばあちゃんは、嬉しそうに挨拶をした。

パッチワークで作ったような、

カラフルな柄のワンピースを着ている。

そこへ、腰巻きの白いエプロン。

腰が曲がっているが、まあ、そこまでは普通のお年寄りなのだが。


アリッサ婆さんは、自分よりも頭ひとつ高い長い杖をついている。

しかも、プルプル震える杖の頂点には、

赤い宝石の入っている。

私の弟が見たら、泣いて喜び、写メを撮りまくるだろう。

炎の杖だそうだ。

本物の炎の精霊から貰ったのだと。

握り拳ほどの大きな赤い石の中では、炎が燃えてるように煌めいている。


そう。

ここは、ただの朝のお散歩コースでは無い。

ファンタジー世界の、朝のお散歩コースなのだ。


私のいた所では、お年寄りは公園とか、

舗装された歩道を歩くのだろうけど、、


ここの世界では、公園の代わりに、近くの森の中を歩くらしいのだ。


舗装なんて、あるわけなく。

獣道。

なので、野良スライムなんかと、で会う事は珍しくはないのだけれど、、


「ピキー!!

おはよう!!

折れまがった、アリッサババア!!」


(この口の聞き方はなんだろう、、)


私は、失礼なスライムの、甲高い声を聞く度に、いつも思う。

悪口だよね?と。


(いつ見ても変な形の、

失礼なスライム、、)


どうやって、形を維持してるのかと、

毎回 目を疑う、目玉と口を睨んだ。



しかも、このスライムの大きさは、

私の腰までの真四角のスライムだ。


もうパッと見は、大きな大きな寒天ゼリーだ。


「んー、、

思ってたんと違うのよね、、」


アリッサ婆さんと歩きながら、

私は呟くのでした。


「ピキーちゃんは、

可愛らしいわね〜♪

ねえ⁇カオリ♪」


アリッサ婆さんは、呑気だ。

スライムの言葉遣いに、イラつく私に声をかけてくる。


「ピキー!かわいい!!

カオリも そうおもうだろ⁈

ボク、かわいいだろ⁇」


スライムも呑気だ。


「呼び捨ては やめて

ピキーは大きすぎるから 可愛くない

寒天ゼリーみたい」


寒天ゼリーが、わからないスライムと、

アリッサ婆さん。


無言で、スライムと顔を見合わせている。


「最高に可愛らしいスライムを、

『寒天ゼリー』って、呼ぶのよ」


しょうがないから、ヨイショとスライムを持ち上げてみた。

スライムは、勿論、素直に喜んでいた。

「ピキー!!

ボク カンテンゼリー!!」


真四角の大きなスライムは、

自分を大きな寒天ゼリーだと理解して、

森に帰って行った。


ふむふむ♪


私はアリッサ婆さんと、心からニコニコしながら、家路についたのでした。

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偉大なる冒険者達にも、老いは来る。 ハッピー @minimag

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