第47話 猫のテレパシーを受け取る嫁

 

 嫁が動物や植物の声が聞こえることは、わたしにとって今や当たり前のこととなっている。

 しかし今回は声を聞いただけではない、嫁はテレパシーを受け取ったのである。


 最近、我が家の茶トラの猫は嫁に「そろそろもう一匹猫飼っていいよ」

 と言っていたそうだ。

 そしてある朝、茶トラの猫から「この子だよー」と嫁にテレパシーで映像を送ってきたというのだ。

 猫から映像を受けとれる嫁もすごいが、送る猫もすごい。


 我が家の猫は動物愛護団体の里親募集に応募して引き取った猫である。

 さっそく嫁がネットで同じ愛護団体の里親募集を調べ始めた。


 しばらくして嫁が叫んだ。

「いた、これだよこの子だよ、色も顔も姿も全く同じ、今朝送られてきた映像とまったく同じだよ!!」


 わたしたちはその猫の里親になることを決め、保護されているシェルターに行った。

 二匹目ということで手続きはすぐに終わったが、問題はその猫であった。

 3.11の震災の被災地で保護されたという猫は、怖がりで、わたしたちは触ることも出来なかった。

 シェルターのスタッフがなんとか捕まえてかごに入れた。


 わたしたちは帰り道、車の中で相談した。

「ゲージに入れてしばらく別の部屋で様子見ようか……あんなに怖がりだと猫同士仲良くなれるかな?なれたとしたもそうとう時間かかるだろうね」


 家に着き、とりあえずかごを茶トラの猫の前に置いてみた。

 中の猫は怯えてかごの奥の方にいる。

 茶トラの猫はかごに近づき、蓋を開けろと言わんばかりにずっと中をのぞいていた。

 わたしたちは蓋を開けてみることにした。

 おそるおそる蓋を開けると、茶トラの猫がつかつかとかごの中に入っていった。

 『初対面でそんなに近づいたら喧嘩になるよ……』わたしたちは緊張した。


 しかし茶トラの猫は怖がっている猫をぺろぺろと舐め始めた。

 30分は舐め続けただろうか。かごの中の猫は少しずつ安心していった。

 なんとその日の夜にはかごから出てきた。


 猫同士、テレパシーを送り合い、知り合いになっていたのかもしれない。


 わたしたちが子供のようにかわいがっていた茶トラの猫は昨年死んだ。

 だが、怖がりだったあの猫が、今わたしたちと共にいる。

 ニャーニャーと毎日賑やかだ。とっても甘えん坊だ。


 嫁も猫もサイキックだったのである。


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