第48話 季節外れの嫁の歌 


猛暑が続く今年の夏。

そうめんをすすりながら嫁は言う。


「やっぱり夏はこれだよね、あーおいしい!」


おいしそうになにかを食べる嫁の姿はかわいらしい。


嫁は歌を歌いだした。

それはうれしくなると嫁が歌ういつもの歌だった。


「もーいくつ寝ると~♬~お正月ー♪」


そうめんがおいしくてうれしくなったようだ。

季節はずれだが、嫁にとってはうれしいときの心の現われである。


もう一曲、嫁がうれしいいときに歌う歌がある。


「きいよし♪♪~この夜~♪」


このどちらかを歌う。


私は嫁に聞いた。

「ねえ、どうしてお正月とかクリスマスの歌を歌うの?」


嫁は一言。

「だってこの歌が好きなんだもん」


別にクリスマスやお正月が好きなわけではなく、

この歌がお気に入りらしい。


好きなものは好き。

この嫁の姿勢は、子供の頃の純粋さを思い出させてくれる。


子供心って大切だ。

何故なら、子供心が人の心の出発点だから。

失ってしまえば、自分がどこから来てどこへ行くのか分からなくなってしまう。


嫁の歌は、わたしを原点に戻してくれる。

もーいくつ寝ると~♬~お正月ー♪




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