第44話 嫁の鬱がきっかけで
小さな会社がやっと軌道に乗り、安心できる日々も増えた頃。
嫁が鬱になり、外出できない状態になった。
嫁は天然でサイキックだが、それに感情がついていけない事が多々あったようだ。
原因は幼少期からの経験や学生時代のいじめ、そして結婚してからの苦労も勿論あったであろう。
小さな会社は嫁と二人で築き上げたものだ。嫁が働けないのは痛い。
それにこのまま嫁が外出できない状態が続くのを黙って見ているわけにはいかない。
不思議な事だが、母の死後、毎週末父のためにわたしの実家に帰ることだけは自然と続けることができていた。嫁にとってわたしの実家(かなりの田舎)に行くことが気晴らしになっていたようだ。
わたしたちは5年間かけて軌道に乗せた会社をたたむことにした。そして私の実家近くに移住する計画を立て始めた。
問題なのは、スタッフやお客様になるべく迷惑をかけずに会社をたたむ事。
そしてわたしの実家近くに住まいを確保することであった。
わたしたちは会社を引き継いで経営してくれる人がいないか探すことにした。
嫁が思いついた一人の知人に電話すると、その人はすぐにその話しに飛びついてきた。気さくで信頼できる人だ。
たった一人の候補者で問題の一つが解決の方向。まさに奇跡だ。
嫁がネットでいい中古物件を見つけた。
別荘風の綺麗な家だ。
買える目途は立たないが、夢を膨らませるために見に行った。
なんと、値段が大幅に下がった。そして父の方からお金を貸すから買ったらいいと強く勧めてくれた。
これでこの問題も解決の方向。
今になってわかるが、わたしたちがこの時、住む場所や仕事に関して大きく方向転換したことで、今のわたしたちの穏やかな生活があると言える。
嫁の鬱も治った。
嫁の鬱は、わたしたちをよりよい生活に導いてくれた。
会社の移譲と引き継ぎ、引っ越し、とにかく色々大変だった。
でも嫁と乗っている人生の船は、流れの緩やかな場所にたどり着いた。
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