第29話 奇跡のスープスパゲッティ

 

 帰り道、私は急にあるものが食べたくなった。

 スープスパゲッティである。

 何故か分からないが、その日はやわらかめに茹でられたスープスパゲッティが食べたかった。

 トマトスープに浸かった、やわらかめのスパゲッティがおいしそうに湯気をたてている。

 わたしは想像をしながら帰宅した。


 さて、スパゲッティでも茹でようか、それとホールトマトはあったっけ……  考えながら家に入ると、嫁が言った。

「おかえり、あのね、スープ作ったよ。」


「あっそう、トマトスープ?」


「そうだよ。」


「おーありがたい。」

 あとはパスタをやわらかめに茹でれば完成じゃないか。

 そう思って鍋を覗くと、なんとスパゲッティが入っている……


「ねえ、これスープじゃなくて、スパゲッティじゃないの?」

 そう聞くと、


「あのね、スープ作ったんだけどね、少しだけマカロニの入ったスープってあるでしょ……それイメージしたけどマカロニ無かったからね、スパゲッティゆでたの、ゆですぎちゃってさ、失敗しちった。」


 『いえいえ、いーですよー、だって私が食べたかった、やわらかめにゆでられたトマトスープスパゲッティができているんですから』


 わたしはありがたくいただいた。

 これを奇跡のスープスパゲッティと名付けた。



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