第7話 沢山の鳩が運ぶかごに乗ったお婆ちゃん


 結婚して1ヶ月後の出来事だった。

 私の実家に、二人でまだ住んでいた頃のことだ。


 *


 朝起きたらなんだか騒がしい。


 老人ホームに入居していた90歳のおばあちゃんが亡くなったらしい。母が、電話で親戚に連絡をしていた。


 「今朝早くにおばあちゃんが亡くなったよ!」


 と、嫁はなんだか嬉しそうに私に伝えた。


 『何故うれしそうなんだ? 少し頭がおかしいのかな?』


 そんなことを考えていると嫁が言った。

 

 「あのね、昨日の夜、おばあちゃんの夢をみたの! 沢山の鳩が運ぶかごに乗って、笑顔で上に上がっていったよ!」


 『鳩が運ぶかごに乗って? なんだかメルヘンチッツクだな』


 私の母親がそれを聞いていて「おばあちゃん天国行ったのね、よかった」と言った。


 『あれ、私の母親も嫁と同類なのかな……?』


 *


 私たちは2日前におばあちゃんに面会に行ったばかりだった。沢山いる親戚の中でおばあちゃんに最後に面会し、会話したのは私たち夫婦だった。


 なんか、光栄だな。

 最後に会えたのが私たち夫婦だったなんて。


 嫁といると、グッドタイミングなことがある。

 それに、鳩が運ぶかご……。


 本当かどうかわからないけど、なんか、亡くなっていく人が幸せに感じる。

 どんな乗り心地だろう?


 お婆ちゃんは、きっと知っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る