切ない想いも、若い頃の恥ずかしい思いも、すれ違った想いも、時が経てば良い思い出になる。そんな人生の温かい機微をしみじみ感じました。
時が経って思い出した時に、懐かしいような、ほろ苦いような・・・・夏の景色とともに思い出の中に描かれる、初恋の物語。
貧しい農家の娘ふじは、夏の間だけ大地主の屋敷に下宿している青年に憧れを抱く。遠くからそっと見守るだけだったが、ある日、青年の落とし物を届けることになる――。淡い恋の行方にもどかしくなりながら読みました。時が経っておばあちゃんになった主人公の、思い出の受け止め方がとても素敵だなと思います。文章も読みやすく、描写が丁寧で主人公のドキドキや後悔などが伝わってきます。さっと読めて読後感もいい、かわいらしい物語です。