メズラ細工

安良巻祐介

 

 驚天動地と帝都で噂のメズラ細工というものをどうしても見てみたくて、それを生業にしているという里を訪ねて行ったけれど、なぜかそこには似たような顔をして動作のひどく緩慢な人たちばかりが、貧相な畑しかない寂れた寒村で生きているとも死んでいるともつかぬ暮らしをしているばかり。何を聞いても遠くを見るような目で、ああとかううとしか答えない。それでも諦めきれずに数日をそこで過ごしたが、結局何の話も聞けないまま発つこととなった。しかし、去り際に何かの気が緩んだか、宿を世話してくれた緘黙の爺さんが、きゅるきゅるきゅると口から音を立てて何かに引きずられるような恰好をした。はっとして辺りを見てみれば、其処らを歩き回っている里人の全てが四肢をあらぬ方向へ曲げて、ふうと一息ついており、さらには里のあちこちからぴしぴしかちかちと何かが噛み合うような音がして、青い空に細かな亀裂が幾つも入っている。そういうような光景が、ほんの一瞬、瞬きするかしないかのうちに垣間見れた。私は、気づかなかったふりをして里を後にした。私はすでにメズラ細工を見ていたらしい。どういう原理でどういう理屈だか知らないが、帝都で噂になるのもよくわかる見事な仕掛けだと思った。

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メズラ細工 安良巻祐介 @aramaki88

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