草地蔵
安良巻祐介
どこまでも無闇に長い畔道の端に、苔むしたお地蔵がいくつも並んでいる。
と言って、それが地蔵と思われているのは、差し出した掌らしき形や、目の前に置かれた素朴なお供え物などのためであって、実のところは、頭から衣の裾まで隈無く苔で覆われた、緑ん坊の群れである。
誰かが、あれはお地蔵様などではない、もっと別のものだ、あんなものを拝んだり供え物をしたりしているのは間違っている、今に怖ろしいことが起こる…と呟いていたこともあったが、長い長い年月の間に恐ろしい事も喜ばしいこともあまりに沢山ありすぎて、どれが何のためなのだか、結局わからないままになってしまった。
だから、その由来のない、得体の知れない緑の群れは、今も同じように、あのどこまでも無暗に長い畦道――それがどこにあるのか、知っている人ももはや絶えたが――に並んでいるという。
草地蔵 安良巻祐介 @aramaki88
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます