「わたしをあいして」(グロいやつ)
摩天楼が並び立つ大都会。その闇にとある噂がはびこっていた。
夜道を一人で歩いてはいけない。善意を決して見せてはいけない。悪意を決して向けてはならない。
その隙を、あの魔物に付け入られるのだから。
どんな都会にも、華々しい光が届かない場所はある。猥雑なネオンばかりが輝くその場所の一角に、一人の少女が座り込んでいた。
十歳ほどのその少女の服はこの場所にはふさわしくない清潔なもので、迷子か家出少女なのだろうと推測できた。
「ねぇ、お嬢ちゃん」
少女にとある男が声をかける。黒縁眼鏡をかけた見るからに善良そうな優男だ。
「どうしたんだ? こんなところにいたら魔物に食べられちゃうぞ?」
「ヒッ……」
「はは、そんなに怯えなくてもいいでしょ」
男が微笑むと、少女も怯えが多少薄れたのか、おずおずと男を見上げてきた。
「こわい……」
「怖い? 何が怖いんだ?」
尋ね返しても、少女は視線をさまよわせるばかりだ。
「とにかくもうちょっと邪魔にならないところに行こうか。ここは人通りも多いし」
彼の提案に、少女は首を縦に振ってこたえた。少女の手を取り、男は路地裏へと入っていき、ビルとビルの間の小道に体を滑り込ませた。
「よし、ここならいいな。お嬢ちゃん、どうしてこんなところに? 家族はどうしたんだ?」
男の質問に少女はなかなか答えようとしない。焦れた彼がさらに質問を重ねようとしたその時、少女は男の腕にすがりついてきた。
「こわい……あいされたい……」
何を言われているのか男は最初分からなかった。だけどその視線に含まれている熱に気づき、彼はごくりと唾を飲み込んだ。
「ねぇ」
少女のかわいらしい声が鼓膜を揺らす。少女はさらに体を寄せてきた。
「わたしをあいして」
その瞬間、男は少女の口を片手でふさいで、ほとんど殴り倒すようにしてそのまま地面へと押さえつけた。それまでの柔和な雰囲気は消え去り、その目は爛々と輝いている。
「声を出すなよ」
男がささやくと、少女はおびえた目で彼を見上げた。男は荒い息で少女をあざ笑ってみせた。
「お前が悪いんだからな、大人をそんな風に誘惑して」
ポケットから取り出したナイフで、少女の着ている薄手のワンピースを一気に引きちぎる。その下からはまるで血の気のない真っ白な肌が覗いた。
「お望み通り犯して殺してやるよ。子供と寝たのがバレたら面倒だからな」
最初からそのつもりだったのだろう。男の目は今では欲望にまみれたものになっていた。
下着もまた切り裂き、露わになった秘部に、慣らしもせず自分のものを突き入れる。しかし柔らかすぎるその感触は明らかに初物のそれではなく、男は少女を鼻で笑った。
「なんだ。お前そういうことかよ、これまで一体何人を食っ……ぐぎゅる?」
そのまま腰を動かそうとしていた男は、妙な声を上げて突然硬直した。動きを止めた男のちょうど後頭部あたりには、鋭い二本の触手が突き入れられている。
何が起きたのか分からずにいる男をよそに、少女から伸びた触手はゆっくりと律動を始める。
「あぐ、ぎゅ、きぃ、ぎぃうぁ、」
耳障りな声を上げて、男はされるがままになるしかない。目は裏返り、だらしなく開いた口からはよだれがだらだらと垂れている。
「ひっ、ごぶ、ぎゅる、ごぽっ」
触手は三本、四本と増えていき、後頭部のみならず、脳幹や耳にもその先端を差し入れていた。
「ん”ぐ、あ”っ、あ”っ」
ついに快楽を拾い始めたのか、血の泡を吐いて男は喘ぎ声にも似た声を上げ始める。触手に吊り下げられる形で蹂躙され続ける男を、男に組み敷かれたままの少女は静かな目で見つめていた。
「~~~~~ッ!!」
無数の触手はずぞぞっと音を立てて、男の脳髄をすすり取る。白目をむいた男はだらんと脱力したままされるがままになっていたが、満足したらしい触手が引き抜かれると同時に男は少女の中に最後の熱を吐き出した。
男はまるで快楽の余韻にびくびくと体を震わせた後、ようやく動きを止める。男の下から這い出てきた少女は、男を見下ろして少し考えた後、その異形の口を大きく開いて、男の頭部へと舌を這わせた。
ぺちゃぺちゃと何かをすする水音が聞こえる。もう動かない男の体温は急速に失われていく。
やがて少女は満足したのか、男から舌を離して立ち上がった。
「わたしをあいして」
ちぎれた白いワンピースをまとった少女は、それを隠そうともせずに夜の街へと消えていく。
摩天楼が並び立つ大都会。その闇にとある噂がはびこっている。
夜道を一人で歩いてはいけない。善意を決して見せてはいけない。悪意を決して向けてはならない。
その隙を、あの魔物に付け入られるのだから。
彼女の名前はモーショボー。愛を知らずに死んだ少女である。
美少女が人間を食べるやつ 黄鱗きいろ @cradleofdragon
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