新築

@Daizu_oo

プロローグ

白いタキシードに身を包んだ私の父が、皆に祝福され満ち足りた声で挨拶をしている。

ひとり娘の、私のパーティドレスにしては地味な格好は眼中にないらしく、その柔らかな目に映しているのは、同じく恍惚の表情を浮かべ純白のドレスを身に纏った女の人だろう。

父親のあんな表情を見るのは初めてじゃないだろうか。ライトに照らされ満足そうに話をする父を遠目に、ぼーっと今までの記憶を辿る。


父が今日、再婚相手との式を挙げた。


会社の取引先で出会ったという彼女は、三十路半ばの品と可愛らしさを兼ね備えた様な、魅力的な立ち居振る舞いをする方で、

ふた回り近くも歳を重ねた父には不釣り合いに感じてしまう程だった。


紹介された時はそれは驚いた。

少し遠慮がちに父の横に座る"新しい母"は想像より格段に若く、聞けば私の1つ下の生まれだそうだ。

「中野さんと、結婚をさせていただきます。遠藤こはると申します。

お母さんなんて思わなくても良いです。呼び方も、名前で大丈夫ですから。」

父に促され辿々しく自己紹介をした彼女は、を終えると「今ので大丈夫だったよね?」というような目線を横の男に送った。

不安そうで、無邪気で、子供のような、甘えたような目線を一瞬。

父も浮かれているのだろう、愛らしいのだろう。

目線を返し次にこちらを向いた時には、もう先程までの緊張した面持ちでは無くなっていた。


自分と父親との、親と子としての繋がりは、この日を境に消滅した。

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