第1話 初アイドル!初ライブ!初異世界!?

あの日見た女性を私は忘れられない。

大きなアリーナ会場のど真ん中に立っている女性。

目がキラッとしてて、顔はキュッと小さく、体はスラッとしているとても綺麗な女性。

テレビの前にいる私はつい、見惚れてしまう。

女性が歌い始める。

すると、会場が声援で包まれる。

会場のボルテージが上がる。

まるで、夏祭りの花火大会のようだ。

キラキラとしてて、目が離せない。

こんな事は毎日楽しみにしている3時のおやつ以上だ。いやもう超えている。

女性が歌っている曲のフレーズが私の心に強く響く。

「信じ続ければいつか叶うんだ〜♪

諦めずにやり遂げるんだ〜♪」

私の鼓動は加速する。

「目の前を突っ走れ〜!♪」

私の体内が熱く唸る。

「夢を諦めないで君がNo.1〜〜〜♪」

私は今までの私を捨てた。

そして、決意を固めた。

「私、アイドルになる!」


そんな幼い私は初めての夢を見つけた。

その夢は高校生になっても変わらない。

今年で16歳になる私 結城 舞奈。

アイドル目指していざ!新人アイドル募集のサイトにアクセス!

そして、今すぐ応募にクリック!!

この作業に慣れてはや1ヶ月経つ。

履歴書には、アイドルになりたい気持ちを綴る。分かってくれる人がいると思っている。いつかこの思いが伝わって私はアイドルになって夢のアリーナで歌を歌う!

そういつも願っている。


だが、現実は絶望的...。

一切、連絡もなく。

求人募集は締め切る。

何度も心が折られた。

何回も挫折を味わった。

私はアイドルになれないのかと。

しかし、そんな私はいつもあの曲を歌う。

「夢を諦めないで、君がNo.1〜♪」

私を変えた曲。私の夢になった曲。

いつか届きたいあの人へと気持ちが昂ぶる。

だから夢は絶対諦めないんだよ!

私は何度でもトライする!!

可能性はゼロではないからね❤️


私は再びアイドル事務所のHP巡りを始める。もうこうなったらどこでもなんでもいいから募集×募集×募集だ!

っと、意気込みを掲げたその時、一通のメールが届いた。

私はそれとなくメールを開く。

そこに書かれていた事は私の想像を凌駕した。驚きすぎて声が出ない。


「あなたをアイドルにさせます。

つきましてはこちらの事務所にお越しください。」


なんと、私をアイドルにしてくれる夢のような話だ。...ん?いくらなんでも怪しいって...? そんな事はどうだっていい!!! 今はこんな美味しそうな話しを逃す訳にはいかない!!!

私は音速のスピードでメールに書かれている事務所をMAPアプリで検索し、直ぐに家を飛び出した!

今は常夏の空。

空気がキリッと乾いていて暑い。

暑いというよりも熱い。

汗をダラダラとかきながら事務所に着く。

一見、普通のビルに見える建物には

『Angel‘s』と書かれた看板がある。

私はまるで地球を割らす勢いでビルの階段を上がる。

3Fに事務所はあった。

勢い良く扉を開く。

「私がアイドルになれるって本当ですか!!!???」

室内が扉を開けた風音とともに静寂に包まれる。

誰もいない...?

室内は殺風景な椅子やテーブル、テレビやパソコンなどいかにも事務所って感じだ。

部屋の奥から物音がした。

そこから謎の男が現れた。

見た目は背の高いスラッとした体型の意外とカッコ良さそうな男性。

しかし、夏だというのにとても暑そうな格好をしている。

なんだよ夏なのにチェスターコートを着ているぞ今ではそれが流行りなのか?

夏物のチェスターコートだとしても暑いだろ今日は!

と私は勝手に思ってしまう。

男性が声を発する。

「君がアイドル志望の結城 舞奈君だね?

私はここの社長、天界 修だ。

どうぞ、よろしく。」

威厳のある口調で彼は話す。

「あ!よろしくお願いします!

それよりも、私をアイドルにしてくれるんですか!?」

「勿論そのつもりだ。

何か都合が悪かったか?」

「いえいえ!私昔からアイドルに憧れていたんです!この日をずっと夢見てました!」

キラキラした瞳で彼を見つめる。

「今日から結城君はアイドルだ。

そして、明日に初ライブを用意している。」

「!!!」

なんと!

アイドル活動初日が初ライブ!!?

夢だったアリーナで歌を歌うこの目標が近い距離に感じる。

「やったーーー!!!

会場はどこですか!?

もしかして、武道館とか!!?」

興奮が収まらない。

こんな短時間でアイドルにもなれて、初ライブも開催されるって!?

そんなの興奮するに決まってるでしょ!

天界はそんな結城に告げた。


「ライブ会場は...異世界だ。」


...?何を言ってるんだこの人は??

念のため、MAPアプリで『異世界 ライブ』と調べる。検索結果はお察しの通り

何も出てはこない。

異世界という会場があるのだろうか?

「えぇっと...異世界っていう名前のライブ会場があるんですかね...?

MAPで探しても見つからないんですけど...?」

「違う。お前の初ライブ会場が異世界にあるんだよ。」

......思考が追いつかない。

そもそも異世界って漫画やアニメの話しじゃあるまいし、存在なんてないはずだ。なのにこの人はまるで存在するかのように話す。

「ここの事務所の扉には、異世界に繋がっている不思議な扉が存在する。

俺は異世界と共存する為に現世でアイドルスカウトを行い、異世界にアイドルを提供している。」

結城は唖然とする。

自分に想定していない事態が起こりすぎて脳が処理に追いついていない。

「もし、気になるなら一回そこの扉を覗いてみなよ。」

結城は恐る恐る社長が座っている奥の不気味な扉をゆっくりと開ける。

そこに見えたのは闇。

空気はひんやりしていて、とても人が出入りして良いような所ではない。

ゆっくりと扉を閉める。

「天界社長、私は今の世界でトップアイドルになりたいのですが。」

「それは無理な話だ。もし嫌ならば今までの話は無かった事にしてくれ。」

「ちょ!ちょちょ!ちょっと待って!!

少し考えさせて下さい!」

深呼吸をし、心を落ち着かせる。

私が目指すのはトップアイドルになること、そして夢のアリーナで歌を歌うこと。それを叶える為に私は何でもやると決めたはずだ。でも、異世界って!

意味が分からないよ〜(涙)


天界が結城に告げる。

「君の履歴書を見せてもらった。そこには『チャンスがあればやり遂げる』と書いてあった。今この時が“チャンス”では無いのか?」

「うっ...」

「決めろ! 結城 舞奈!

お前はアイドルになりたいんだろ?

ならここで決めろ! お前はどうする?」


「わ、私は...」

ふと、昔を振り返る。

私が憧れている女性を思い出す。

彼女が歌っている曲を思い出す。

「夢を諦めないで、君がNo.1〜♪」


そうだ、私は。私がなりたいのは。


「天界社長、こんな私でもアイドルになれるチャンスがあるならば私は手を伸ばし続けます!だから、私をアイドルにして下さい!!」


今、新たなアイドルが誕生した。

でもそれは、現世ではない。

異世界で活動する。

『異世界アイドル』だ。

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アイドル活動は異世界の中で! かしパン @kasipann0315

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