第39話 明かされる真実
「呪い?」
「ああ、傑作だ。こんなに面白いことは中々無いわ。アサヒやはりお前はこちら側に居るべきだ」
ギュスターは心底おかしいと言った様子でその手を広げたかと思うと顔を覆い声を押し殺して笑っている。
「何の事を言っているんだ」
「まぁそれは良い。約束した真実そろそろ教えてやろうか」
「今までの話しじゃ――――」
「こんな物ただの与太話よ。誰でもいつかは知る話だ」
さっきまでの話しでも僕等が知ることの無かっただろう情報である事には違いない。
それをいずれ誰もが知る事の出来る情報とは?
それに、真実―――
今からギュスターが語るその言葉にどれほどの価値があるのだろうか?
それでも此処まで来てしまったのだから聞かなければ。
何故かそんな強迫観念に駆られてしまう。
これも彼の放つ
「そうだな……一つと言ったからな、なるべく劇的な物が面白いだろうな、こう言うのはどうだ?さっきも言ったがお前等が戦えば戦うほど世界の変革は進む、そしてそうすることによって、お前等の言う所のMutantEnemy、所謂MEが多量にこの世界に流れ込むとしたらどうだ?クックック、命を賭して人々を守る為にしている事が実は我々の為になていたとしたら?ああ、こう言うのもあるな。ME、それ自身が元々依り代が人間だったとしたら?これは昨日言ったか?クッハッハッッハッハハ!!傑作だろう?お前等が、ブフッ!助けようとして倒してたMEが元を正せば人間で、同族同士で殺し合い、何のことは無い、それを後押ししてるのが神でしたって話しだ。どうだ面白いだろ?お前等が振るった剣で断ち切ったゴブリンの首や突き刺した心臓は元を正せばお前等人間の物って事だ!どうだ気に入ったか?それとも人間は同族殺しをやり過ぎているからそれ位どうって事無いのか?どうした何か言ってみろ?この巫山戯た世界に呪詛でも
人がME……MEが人……。
昨日も言われた話しだけど、ここまでハッキリ言われると少し堪える。
それよりも神という存在が後押ししているとは……。
確かに神を信じますか?と聞かれるとNOと側頭するけれど。
だけども――――
「―――――まぁ、そんな気は少ししてた」
僕は少し覚悟していた部分があった。
そう言った可能性も在るのではないかと。
昨日聞いていた話しからそれとなく推測していた。
だからまだまともで居られた。
僕の隣で聖騎士の二人は少し放心している様に見えた。
「何だ。意外に聡いな。知っていたのか?」
「何となくな」
「面白くないな。仕方ない……それじゃもう一つ。これはサービスだ。お前等の近くにフェノールと名乗る男は居ないか?」
「……居ない」
「ふむ。ではクリオス、もしくはクラークスそれに近しい名前の男、そうだな……アドバイザー、それも研究者の様な立ち位置の男は居ないか?」
クラークス…久樂博士の事が頭を過ぎる。
「それが、どうした」
「クックック…その様子じゃどうやら居るみたいだな。その男がこの世界の混沌を招いた大罪人だ」
「どういう事だ!
「ほう。今は久樂と名乗っているのか、クリオス・フェノール卿は」
博士の名前を聞くと、随分楽しそうにギュスターは嗤った。
□■□■□■□■□■
「自動展開型迎撃ドローン『ファンネル』展開!!!」
私の周囲に小型の自立式ドローンが展開される。
久樂博士と共同開発した迎撃用のドローンだ。
その性能は非常に高く、科学を応用した魔導併用の最新型兵器の一つだ。
周囲のLoonを吸収しながら魔導を放ちMEを自動で迎撃する私の切り札だ。
「行けぇ!!!!」
8つのドローンが同時にそれぞれ魔導を放つ。
火炎放射器の様な物だったり雷の様な物だったりと種類は多様だがその威力は眼を見張る物がある。
全ての魔導が前方のMEに着弾する。
腕がもげ、脚が吹き飛び錐揉みして地に伏す人型のソレ。
ちぎれ飛んだ腕がもぞりと動き出すと身体に向かって動き出す。
そして腕だった物が脚に取憑くと腕だったそれは脚に変わっていく。
「何なのよこれ!」
由奈は気が違いそうだ。
人を模した真っ黒いMEが幾ら葬っても幾ら倒してもソレは立上り尚も前進して来るのだ。
弟の瑛十は同じような真っ黒なMEを円月輪で輪切りにしてはいるが切断した端から元通りに接着していく。
真っ黒なME、そう表現しているが実際は真っ黒い蠢く何かに覆われたMEという表現が適切なのかも知れない。
最初に脚を吹き飛ばしたときは血飛沫が確かに飛んでいたのだ。
それが回を重ねる毎に血では無く、肉から黒い何かが沸いて出てくるのだ。
今やその肉すら見えない。
既にその全てを侵食されている様だ。
「取り敢えず外に出るよ」
瑛十君の声に私は応える様に踵を返す。
ファンネルを展開する事によって私たちが逃げる間ぐらいは、何とか持ちこたえれるだろう。
ファンネルは壊れれば此方にアラームが鳴る。
それは此処が突破されたことを知らしてくれる事と同意だ。
これでしばらくは時間が稼げるだろう。
だけどこの撤退が悲劇をもたらすことを私この時知る由も無かった。
私たちの後ろではファンネルが迫り来る真っ黒いMEに対して魔導を放っている。
その隙に来た道を一足飛びに駆け抜ける。
どれくらい走っただろう?
黒いMEは見たところ動きが緩慢だったしファンネルを置いてきている事から恐らく逃げ切れているだろう。
前を走る瑛十君もその事に気付いてか少し走る速度を落とす。
「……由奈大丈夫?」
「うん」
通路の先に出口の光が見える。
「取り敢えず外に出ましょ」
「……分かった」
私たち二人は脱兎の如く洞窟を後にした。
洞窟から出るとさっきまで感じていた寒気のような物が少し和らいだ気がした。
浅日さんが言うには強いMEが自然と放つ瘴気という波動の様な物が漏れ出すことがあるらしい。
ある程度の実力があれば自ずと目視出来るようになるらしいが私にはまだ瘴気を見る力は無い。
だけど感じることはどうやら出来るようになったらしい。
こう言う寒気の様な物を感じる事が出来様になると直に見れるようになると言っていた。
あまりの実力差があると見ることは愚か全く何も感じれられないらしいが。
入口から少し離れた所で一息ついていると後方からガサガサと草木が揺れる音がする。
肩に吊したM4カービンを小脇に抱え直し臨戦態勢を取る。
そんな私を瑛十君片手で制した。
「……大丈夫……味方」
そう言った直後に眼前に生い茂る草が一際大きく揺れる。
そしてぶつぶつと文句を言いながら出て来た先頭の子は確か清水源樹と名乗っていた少年だった。
驚くことに、清水君の後に続々とD班の面々が現れその後ろには後藤長官と夕紙サポーターそしてその後詰めにC班の面々まで居るじゃないか。
「一体どうして?」
「大河内廉也見なかった?」
そう私が問いかけたと同時に後藤長官が問いかけてきた?
「は?え?廉也と言うと第3世代の勇者の?」
そう言えばD班の面子が一人足りない。
「そうよ。どこかで見なかった?」
「いえ。恐らく瑛十君も見ていないはずです。ずっと一緒に行動してたので」
「……同意」
「そう、そうなるとやっぱりこの中ね……」
ビーーーブッ
突如アラームが鳴る。
ファンネルが突破された。
ビーーー、ビーーーー、ビーーーーブッ
連続してアラームが鳴る。
8機在ったファンネルが尽く破壊されている。
「どうしていきなり……」
さっきまで、物の数分だが8機のファンネルは時間を稼げていたはずだ。
下手すればあの黒いMEを片付けてくれているのでは無いだろうかと期待していたほどだ。
「何なの?この音」
「これはこの先で戦闘していた私の自動展開型迎撃ドローンが撃墜された報告です」
後藤長官に報告しながら冷や汗が背中を伝う。
さっきまで対応出来ていたのがいきなり出来なくなった。
その原因は2つしか無い。
さっきの黒いMEがファンネルに対応出来るようになったか、別のMEが現れてあっさりファンネルを破壊したか。
後者出ないことを祈るしか無い。
「……折角ここまで来た所悪いけど早く逃げた方が良い」
端的に瑛十君が告げる。
「そうね。取り敢えず逃げましょう」
「一体どういう事なの?」
「口論している暇も惜しいので兎に角此処を出た後で」
そう私が言うも後藤長官は納得していない様子だ。
その場を動こうとしない。
「そうも言ってられないのよ由奈……ロストしてるのよ」
ロスト。
それは作戦行動中のBHが行方不明、若しくは死亡した事を指す。
「―――――誰が?」
私は擦れそうな声を喉の奥から絞り出しそう後藤長官に返した。
誰が?と言った後で私は気付いたいた。
此処に居ないのは現状白鳳凰の4人とA班の3人、後は唯一単独の―――――
私がその考えに至った時、後藤長官は伏し目がちに答えた。
「大河内――――廉也よ」
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