ちょっと今から死んでくる

鮎川 拓馬

ちょっと今から死んでくる

子供がいるから、とか


残された家族の世間体が悪くなるから、とか




そう言ったしがらみがなく、




もうこれ以上、立ち上がれないほど、辛い事があれば、




『ちょっと今から死んでくる』




と、簡単に行動できる人は、苦痛―生から解放された後、自分は他の人に比べて、はるかに『幸せ』だ、満たされている、と言うのだろうか。










頑張れ、と人は言う。


頑張らないと、と自分は思う。




だけど、どこまで、何を目指して頑張り続けるのか。




人生80年。




受験を頑張り、


就職を頑張り、


仕事を頑張り、


結婚生活を頑張り、


子育てを頑張り、


老後を充実させるために頑張り、




そして、死ぬべきだという、世間一般の暗黙の了解。




どうせ死ぬのに、何故頑張るのだろう。


頑張り続けている間、苦痛しかないというのに。




頑張り終えて、達成感を味わえるのは一瞬。また次の『頑張るべきモノ』が待ち構えている。


『いたちごっこ』という言葉では、齟齬があるが、まさしくその様相であろう。






頑張りたくないから、人生を終了させる事もまた自由。


しかし、そうはできないしがらみが、『人間』には多すぎる。






果たして『人間』は、一瞬の達成感に酔い、快楽するために頑張るのか、


世間一般の暗黙の了解のために頑張るのか、


しがらみに囚われているから頑張るのか。








もう疲れた。






答えなんて出るはずもないから、もう寝る。




そして、明日もまた、あさってもまた、一年後もまた、


摸索しながら、私は生き続けてしまうのだろう。

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ちょっと今から死んでくる 鮎川 拓馬 @sieboldii

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