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「そんなわけで、歌子ちゃんは私と友達になって登校するようになったの」
お昼休みの教室。冷凍食品を詰めたお弁当を食べながら、私は六年ゼロ組の皆に今回の事を報告した。
皆はそれとなく手伝ってくれたけど、最後はほぼ私だけで解決してしまった。
それが悪いということではないけれど、伝えておくのが仲間だと思う。
「しかし思い切った事をしたよな。俺は悪口をプリントアウトしただけだけど、なんかもう疲れたぜ」
「ごめんね。変な事任せちゃって」
リーチ君は大口開けて愛情たっぷり弁当を食べながら愚痴る。私の知り合いでパソコンできるのはリーチ君だけ。仲間の悪口をプリントアウトするというのはかなり嫌なことだろう。私だって同じ立場ならやりたくない事だ。
でも、リーチ君は私と歌子ちゃんにそれが必要だからとそれを引き受けてくれた。
「朝日さん、登校っていっても五年ゼロ組なんだよね?」
「うん。もう登校拒否してないから元のクラスに戻れるんだけど……元のクラスには通い辛いみたいで」
「だよね……」
たすく君はお弁当をのんびり食べながらため息をつく。いくら悪口を気にしないようにするとはいえ、傷ついた心は治らない。八雲先生とは仲直り?できたけど、教室に入っただけで嫌な気分になるかもしれない。
でも歌子ちゃんはいつか克服できる子だと私は思う。それまで五年ゼロ組でがんばってくれるはず。運動会だって出てくれると約束してくれたのだから。
「小夜子もがんばった」
お面のないザクロ君は大きなおにぎりを頬張りながら、私を褒める。確かにがんばった、というよりは無理をしてしまったかもしれない。
私がしたのは悪口を自分から探った事なのだから。
「きっと、小夜子があまりよくないところを見せたから。だから朝日は『この人は綺麗事だけじゃない』と思ったんだ」
「そうなの?」
「……そこまで考えてなかった?」
「うん。私がどういう子か知ってほしかったし、かっこ悪いところも見てもらったほうがいいかなって思ってただけ」
ザクロ君の考えは深読みじゃないかというくらい、私はその程度の事しか考えてなかった。でも他にも色んな事が重なって、歌子ちゃんは登校してくれるようになったんだと思う。歌子ちゃんも本当は登校するタイミングを探っていたのかも知れない。
運が良かっただけ、とも言う。不登校というのはそんな簡単に解決するものではないそうだから。
「小夜子ちゃん」
教室の扉口から遠慮がちに声をかけて来たのはその歌子ちゃんだった。
歌子ちゃんはあれから私には普通に声をかけてくれるけど、男子に対してはまだ苦手意識があるらしい。だから男子が三人もいる教室に入りづらいようで、私からそちらに向かった。
「あのね、お昼休みにリレーの練習したくて。後でいいかな?」
「いいよ。やろう」
そう答えると歌子ちゃんはとても明るい笑顔を見せてくれた。
その笑顔で私にあった嫌な記憶も、少しは薄れてくれる。
六年零組の特別課題 kio @kio___
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