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「ちょ、ちょっと観光してからでも、いいんじゃないかな?」


 あなたはリコスから若干目をそらしながら小さなワガママを口にした。初めて目にする全く違う景色の世界に心奪われてしまったのだ。興奮を隠しきれないその様子を見た彼女はハァと軽くため息を吐き出した。


「仕方ないな、まぁ、ちょっとこの辺りをブラブラするだけなら」

「そ、それで十分だよ!」


 こうして2人は近代的な建物の立ち並ぶこの世界の観光を始める。特にあなたは初めて都会に出てきたお上りさんのように、キョロキョロと顔をせわしなく動かしながら道を歩いていた。

 しかしそのせいで前をはっきり見ていなかったのだ。あなたは前から歩いてきた柄の悪そうなにーちゃん達に運悪くぶつかってしまう。


「あ、悪い」

「あぁん? にーちゃん、そっちからぶつかってきて悪いの一言だけで済むと思ってんのか?」

「えっ?」


 ちょっと観光するだけのはずが、とんでもないトラブルを引き起こしてしまった。あなたはここで腰の剣の柄を握ろうとするものの、ここで騒ぎになった時の事を考えると容易には判断が出来なかった。

 知らない世界では何がどう動くのかさっぱり予想がつかないからだ。


「全く、仕方ないわね」


 この騒ぎの中、ずっと様子をうかがっていた彼女は、軽くため息を吐き出してあなたの手を突然握ってきた。


「えっ?」

「ここは逃げるしかないでしょ」


 リコスはそう言ったかと思うと転移魔法を発動させる。2人の足元に魔法陣が発現し、そのまますうっと姿が消えていく。


「ちょ、ま……何だぁ?」


 因縁をふっかけてきたチンピラ達は、2人の姿が消えていく光景を目を丸くして口をあんぐりと開けながらただ見つめるばかり。

 あなた達はこうして無事にアクシデント現場からの離脱に成功したのだった。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054886424135/episodes/1177354054886593851


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