第172話 最後の更新


 渡辺博己から電話が来たのは、陽のスタジオで木暮栞に面会した3日後のことだった。


「大月さんが生配信やるって記事がブログに出たんです。もうネットで話題になり始めてます。放送は明後日」



 電話を片手に、急いでカズのPCを開いた。

 私自身は既に退院していたが、日中はリハビリとカズの付き添いで病院に入り浸っている。カズは依然、意識を取り戻していない。病室の外には必ず、私服の警察官が付いている。カズが目覚めたら話を聞くために。



 陽のブログを確認してみると、「最後の更新になります」というタイトルに、簡潔な文面の記事がアップされていた。

 理由は述べぬまま、関係各位へのお詫びと、生放送の報せとその日時だけの記事。コメントやメッセージを送る機能は、全て閉じてあった。



 嫌な予感ばかりが募る。焦燥感で胸の中が焼け爛れそうだ。


 捜索願は出してあったが、本気で探す気があるのかどうか。

 外に待機している警官はあてにならない。でも、もう一度掛け合ってみよう。それしか出来ることが無い。



……陽、お願い。電話に出て!


 無駄だと知りつつ、祈りを込めて陽の携帯に電話する。虚しく響くコールを聞きながら、夏蓮は警察署へ向かった。



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