第4話

                  ○

 小百合の話。

 クラス会までに、少しでもたるみを無くそうとマッサージをしておいた。昔はスタイルが良いとかよく褒められたけれど、今は子どもと旦那の世話ばっかりで老けていく一方。姑の機嫌を伺ってストレスも凄い。

 みんなは今、どんな生活をしているんだろう。老け顔は見られたくないけれど、近況報告は愉しみだな。


 高校時代、クラスで上から三番目位の成績だった歩が一番の出世頭らしい。どんな風に出世したのか聞いてみたら、返答は意外なものだった。


 高校卒業してからすぐ歩が就職した会社は学歴重視だったらしく、後から入社してきた大卒の人間の方が給料も立場も上で、歩は辛い日々だったようだ。大きい仕事を任せてもらえずいつまでも新入社員のような仕事内容にストレスが過大になり、このままでは大卒の社員を超えられないと思い、思い切って転職したそうだ。

 中途入社した会社は能力重視の会社で、学力も行動力もある歩には合っていたようだ。企画書や改善提案書などを積極的に提出し、歩の地位は確実に出世コースに沿っているようだ。こんなにキラキラしている歩にも、そんな辛い時期があったのか。


 昔から変わらず綺麗な純子の話も聞いた。数年前、周りが結婚ブームだったらしく焦ったのか流されたのか、純子は当時の恋人と入籍したそう。「何だかよく解らないまま結婚しちゃったけどハズレでさ、すぐ離婚した」と正直に云っていた。純子は昔も今も変わらず輝いている。


「二人とも凄いな、自分の状況に屈しないんだね。私も見習いたい」と私も正直な気持ちが出た。

「そうだよ、何も怯える事なんてないよ。旦那の実家に一生住まなきゃならない法律がある訳でもないんだし。小百合はもう少し自分本位に生きても良いと思うよ。大体、旦那は大人なんだし、世話する必要無いでしょ」と云われた。確かに、世話をするのは子どもだけでいい筈だ。涙が出そうな程嬉しかった。


 みんなに刺激されてパワーを貰った気がした。早速次の日、変化が起こった。私の作った夜ごはんに相変わらずケチをつける姑に一喝。

「じゃぁお義母さんが作ってくれますか」と真顔で云ったら姑は黙ってしまった。その日から姑は、たまに私の機嫌を伺う日がある。何だ、こんなもんか。

 ありがとう、歩、純子。

 

                 ○●

 私の話。

 クラスメイトからの質問で一番疑問だったのが「結婚しないの?」だった。そもそもこの質問自体、意図は何なのだろう。既婚者が落ち着いて見えるのが少し羨ましい気もするし、独身を満喫しつつ「結婚したーい」って叫ぶのもはっきりしていて羨ましい。

 どちらにもならない私は、どういう回答をしたらいいのだろうって思っていた。けれど、どちらかである必要は無いのだ。みんなの話を聞いてそう思った。今はバンドやアイドルの追っかけが愉しい。

 年齢的に、仕事や結婚・出産の話題が中心だったようだ。みんなの話を聞いた感じ、出世や、配偶者や子の有無が幸福の測定基準では無いんだなぁと実感。

 恋人に執着する必要も無い。いつだったか「この人を逃すと、次の相手を探すのが面倒だな」って思った事もあったけれど、縁というのは、そうゆう事じゃないんだと思った。


 みんなそれぞれの人生を送っているけれど、幸福とそうじゃない事のバランスはもしかして一緒なのかな。五人全員が、お互いの話を聞いて納得していた。

 自分の人生だけを見ていたら、まっすぐなのか曲がっているのか、解らなくなりそう。だからたまにこうやって、集まろうか。

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女子五人 青山えむ @seenaemu

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