第3話

                  ○

 はるかの話。

 クラス会に行くの、本当は結構憂鬱だった。でもさやかが凄くみんなに会いたそうにしてるのが解ったし、ここで水をさす訳には行かないと思った。愉しい事もあるかもしれないし、あんまり深く考えないで参加しようと思った。


 当日、やっぱり子どもがいる子が何人かいた。子育てあるあるを愉しそうに話すのかな? って思っていたら、意外にもリアルな現状だった。

 子どもがひきこもりで、どうしたらいいか解らないとか。旦那の給料が下がって学費がきついとか、姑の苛々が子どもに向かうとか……。何だか、相応なのかなって思った。


 私も申し訳程度に独身のあるある辛さを話しておいた。レシピを見ないと料理が出来ないとか親戚のおばさんが結婚結婚うるさいとか。

 食事はデートで結構外食だし、仕事も面白いから今は結婚なんて考えてないんだけど。さすがに温度差がありすぎるのは場が白けると思い。そしたら「はるかは美人だし、もてるからいいなぁ。お金持ちの人をつかまえなよ」なんて云われた。


「デートには誘われるけれど、中々次に発展しないの」と正直に話した。

「はるかは美人すぎるのよ。それにモデルかと思うほどファッションも素敵だもん、男がびびっちゃうのよ。でも変える必要なんて無いよ。次に発展する為に、相手を見つける為に自分を下げるなんて馬鹿げてるもの。そのまま美しさを維持してほしいな。そしたらこんなに綺麗な友達がいるって、子どもに自慢できるし」なんて云われた。

 嬉しかったな。私は自分の周りと仕事しか見えてなかったけれど、家事と子育てをしながら他人にも的確に意見出来るクラスメイトが輝いて見えた。

 そもそも、何で私は子持ち組を気にしてたんだっけ? 本当は、羨ましかったのかな。でもこのままで良いって言葉にして云って貰えて、何だか吹っ切れた気分。ありがとう、ママ(笑)


                  ○

 美保の話。

 久しぶりに飲みに行ける。何着てこう。あんまり張り切ってるって思われるのも恥ずかしいし、でも地味な服も嫌だし悩んじゃうな。こうゆう悩みも久しぶりで愉しいな。

 ショウコも小さい子が二人いて、毎日賑やかすぎるって云っていた。賑やかすぎるって表現、好きだな。寂しいのは耐えられない。クラス会では、一応子育ての大変さを云ってみたり、さりげなく子どもの自慢もしてみた。


 独身チームが仕事で出世コースとか合コン行きまくっている話とか、正直羨ましいって気持ちもある。でも結婚しちゃえば相手探しはしなくていいし、嫌な上司や客に怯えなくていいし、優越感もあった。けどさすがにそんな事をここでは云えない。ショウコともっと話をしたいので、連絡先を交換した。


 ショウコとはよくメールをした。クラス会がきっかけで、さやかやはるかともメルアドを交換したけれど、二人とも仕事とか趣味に忙しいみたい。返信はくれるけれど、不規則な時間に簡潔な本文が届くだけだった。ちょっと寂しい。ショウコは生活時間も環境も一緒なので頻繁に送受信している、ショウコとのメールのやりとりが愉しみになってきた。


 ショウコとのメールが日課になる程の頃、メールの内容はお互いほぼ愚痴を送信して、慰め合うといったパターンになっていた。

 さやかから送信されるメールは簡潔で、ショックな事があったとしてもそれをバネにしているといった印象を受ける。はるかも同様だ。二人とも、向上心のある人間だ。それに比べて私とショウコは、傷のなめ合いをしているみたいだ。

 ショウコとは一時的に盛り上がったけれど、長い目で見たらこれは良くない関係になりそう。私はショウコとは距離を置こうと思った。

 今までは子育てで辛い事があったら、メールでショウコに伝えればいいや、って思っていたかもしれない。メールを打つ時間を、問題解決の時間に使おう。さやかとはるかだったら、きっとそうする。

 ショウコもそうなれるように、時々送信するメールは、簡潔にしよう。

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