第8話 作戦

「というわけだ。協力して欲しい」

 ミリオはそう言ってびしっと斜め45度に頭を下げた。

 壮絶な一夜が明け、これからどうするか話し合うというとき、ミリオの幼馴染にしてヨハク達のクラスメイトでもある絵里奈から連絡があり、首領・ホーテで行方不明になってしまった委員長こと葵を救って欲しいとのことだった。

 助けに行きたいのはやまやまだ。だが、そこまでどうやってたどり着くかよしんばたどり着いたとしてもそのあとどうするか?出たとこ勝負の作戦にヨハクはすぐに賛同することが出来なかった。ゴンやグリもそれは同様みたいでみな一様に黙ってしまっていた。

 頭を下げたままのミリオ、その重苦しい空気を物ともせずに口を開いたのはアイリスだった。

「却下ね」

 アイリスは頭を上げたミリオに続けた。

「そんなことしてなんになるのよ。無駄に危険なだけじゃない。そんなことに私の花は、協力させないわよ」

「アイリス、そんな言い方」とヨハクがアイリスをいさめようとしたとき、ミリオが右手を上げてそれを制した。何かアイリスを説得出来ることがあるのだろうか、ヨハクはミリオに任せることした。

「アイリス、確かに危険だが、今度のことも考えてだ。メリットも当然ある」

「ふーん、言ってみなさいよ」

 アイリスの黄色の双眸に、ミリオが映る。

「まず一つ、食料がないどちらにしろ外には出ないといけないんだ。2つ、武器が足りないのと弾薬の補充がきかない。ヨハクの武器はエアーガンだろ?その弾であるBB弾だが、あと数回しか戦闘は出来ないだろう。それにここには薬や服なんかもあまりないしな。今のままでもかなりジリ貧なんだ。そこで武器と弾薬、食料に衣料品、薬なんかも探さないといけない」

 アイリスは小枝のように小さく細い人差し指を唇にあてうーん、可愛らしく考えているようだ。そこにミリオが追い打ちをかけていく。

「そこでそれを全部兼ね備えているのが、実は首領・ホーテなんだ。知っての通り……アイリスは知らんかもしれんが、ホーテは食料品から衣料品、雑貨からキャンプ用品、ドラックストアも併設されているから、この店に来ればなんでも揃うというのが謳い文句の店だ。それに極めつけはこれだ!」

 ミリオはそういって、両手で一枚のポスターを広げた。

 琥珀色でおっとりしたたれ目に、ニッコリと満面の笑みをうかべ、ぴったりとした薄緑のタンクトップからは多少の膨らみ、構えた左手からは健康的で綺麗な脇が覗く。

 東京ゼロイのホビーショー開催というデカデカとした文字と、今が旬のミリタリーアイドル小倉 小豆おぐら あずきちゃん来店&トークショー!と書かれたポスター。それはヨハクが二丁拳銃で見たものと同じものだった。

「ミリオは…………そもそも僕の能力スノードロップを信じてくれているの?」

 ミリオにふざけた様子はない。真剣な眼差しをこちらに向けてきた。

「勿論だ。俺はヨハクの話を信じるよ。そうじゃなきゃマスターの説明がつかないしな、ゴンやグリも納得済みだ」

 ヨハクがグリやゴンを見ると二人は大きく頷いていた。

 ミリオが、さらにとだめ押しを続ける。

「ほかの生存者も一緒だ。クラスメイトの朝霞、灰岡、浜崎、それにこのポスターに映っている小豆ちゃんもいるらしいぞ!」

それにグリだけが、「……えっ、う、うぉおおおおおおお!!まじかっ、なんでだよ?!」と興奮した声を上げている時、

 朝霞、その名前を聞いてヨハクの心臓がドクンと高鳴った。

朝霞さんが生きてる。そして首領・ホーテにいる!ヨハクの胸になんとも言えないような高揚感と高鳴りを感じたが、恥ずかしさになんでもないように装っていると、

「よかったな、ヨハク。小百合ちゃんに会えるぞ」なんてゴンがにやつきながら言ってきた。

「仲間がいる、武器がある、食料も衣料品も薬も、俺たちに必要なものは全部ある。ついでにお姫様を一人救うだけだ。どうだ、アイリス協力してくれないか?」

 悪いけど、と前置きしてアイリスは、

「こちらは拠点の確保を優先させてもらうわよ。どこぞの雑草に興味なんてないんだからね!」

 ツンッと澄まして言った。

「よし、決まりだ。これから委員長救出&新たなる拠点確保作戦だ!」

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