第18話



定期便から降りた私達は坂を上った馬屋へと行き、帰還スクロールで帰ることとなった



学院へ戻るとアルテア様は急ぎ学院長へと向かった。



「学院長、急ぎの用がありまして参りました」



扉を開けるとともにアルテア様は飛び入った。



学院長がそっとこちらを振り向き呟く。



「内紛ですね」



「はい、国境へいった魔導士達を呼び戻してほしいのです」



「彼女らは今切り立った崖の吊橋を挟んでの膠着状態です、呼び戻すなら吊橋を落としてからにしましょう」



「先生、私のハヤブサを使ってください伝書鳩より格段に早いです」



「ではそうしましょう、返信がくるまで各自待機してください」



そういうとベルのハヤブサに文書を付け最前線まで飛ばした。



「じゃあ暇になっちゃったからどうしようか」



「私お風呂入りたい」



私の身体は潮風でベトベトだ



「いいわねお風呂、アルテア様もいることだし」



「えぇ、でも私お風呂に一人で入ったことなんていつもメイドが付くし……」



「だ~いじょぶよ、メイドのやり方真似ればいいだけなんですし」



「そうだよ、アルテア様も一緒に入りましょう」



こうして私達は裸の付き合いをすることとなった













私達は着替えの予備の制服を持って大浴場へときた。



戦時中ともあってか貸し切り状態である。



皆それぞれ服を脱いでいく。



アルテア様も最初は恥ずかしがっていたのに観念したのか脱ぎ始めた。



私は思わず皆の胸に目をやる。



まずベルとアルテア様は豊満な双丘の丘が並んでいる艶めかしい肢体だ。



先生のは大きくもなく小さくもなく過不足無しだ。



一方私は、普通より少し少なめの膨らみが2つ……。



そうだコマチちゃんは。



急いで私は目をそちらへ向けると。



微妙な膨らみだった……が眼を引いたのは身体中の古傷。



剣術修行をしていたとは聞いたがこれは実戦で付いた傷なのだろう。



そして背中の膨らみ、二の腕、腹筋まで修行した戦士の身体だった。



それがコマチちゃんが如何に実戦で経験を積んだかがわかる。



「やっほー一番乗り~」



と飛び込まんとするベルに先生が制止する。



「ちゃんと身体洗ってからよ」



「は~ぃ……」









その後は5人でどっぷりとお湯に浸かった。



アルテア様もベルもすごい、お湯に浮いてる……



たわわな果実が4つお湯に浮かんでいる。



「ベル結構いい身体してるじゃない」



ぐいっと後ろから胸を鷲掴みにする。



「きゃぁ!先生何するんですか」



「チェックよチェック」



「ちょっとステラもコマチも助けてよ」



じぃ~



私はベルが先生にいじられてるのを見つつも自分の胸を見下ろした。



コマチちゃんのほうへ目をやると



「私はまだ成長期……大丈夫、希望はある」



「私だってまだ成長期だよ!」



そんなやり取りをしながら入浴は終わった。






一方その頃ーーー国境の吊橋付近では。



「何!?撤退命令?」



にらみ合いの硬直が続くなか魔法部隊を統括するテントのアレスの元へ学院長からの通達が届いていた。



「はい、吊橋を落として進路を断ってから一旦帰還せよとの命令です」



若い魔導士は文書を手渡しそう告げる。



「正規軍の兵達には同説明する?」



「一斉に帰還魔法陣で戻るので説明は不要かと」



「そんなことをすれば逆賊ととられなねないぞ」



アレスは文書を広げたあと驚愕の表情に変わる。



「何だこれは……まさかクーデターを起こすのか、至急最前線にいるリリアーナ、エリザベル、ヴェネットに橋を落として戻るように伝えなさい」



それを聞いた若い魔導士は足早にテントの外へ出ていった。



「なんてことだ、姫殿下は存命にあられたのか……」



その頃最前線では。



「弓構えー……撃てっ!」



ヒュンヒュンと音を鳴らせて矢の雨が降り注ぐ……はずだった。



リリアーナが突風を巻き起こし矢と次々と谷底に落としていく。



グリタニア軍も橋を渡るに渡れず迂回するかどうかで迷っているようだった。



報告を受けたリリアーナ達魔法騎士団は一箇所へと集まり始めた。



そこには巨大な魔法陣が描かれており全員がその中に入っていた。



「先生、全員魔法陣の中に入りました」



若い魔導士が報告する。



「よし、帰還!」



パァっと地面の魔法陣が光り、魔法女学院の生徒達は一瞬にして消えた。



戻った先には学院の敷地内でレジスタンスに与する冒険者や傭兵などが集まっていた。



台の上にはアルテア様が立っている。



「皆さんよく集まってくれました、私は本来なら妹に暗殺され亡き者にされていた身ですが護衛に付いてくれた優秀な魔導士に助けられました


 その御蔭で隣国アルヴォネンとの協定を結ぶことができ、こうしてこの場に立つことができました、そして今王宮はもぬけの殻です少数の兵と王宮魔導士によって守られてる城を取り戻すのです


 その為には皆さんのご助力をお願いしたいと思っています、最前線の兵が戻ってくるまでの僅かな猶予これを逃してはなりません、私は暴君と化した妹を討ち果たします


 あちらは少数精鋭ですがこちらには数で分があります、私が新女王に即位した暁にはアルヴォネンの協力を得てグリタニアとの和睦を成立させますどうか皆さんこの国の為に戦ってください」



うぉぉぉぉと一団から鼓舞の雄叫びがあがる。



大量の馬車が傭兵や冒険者達をのせて王宮へと向かう。



生徒達も自分の馬に跨がり馬車の後を追う。



「さぁアルテア様、私達も」



アルテア様は先生の馬に跨がり学院の門をでた。



私達は先頭とは外れ森の中をショートカットしていく。



役目は裏門の跳ね橋を下ろすことと開門すること。



獣道を掻い潜って森の中を疾走する。



攻城戦において門の開閉は重大任務だ。



城壁の上の衛兵二人を先生とベルのライトニングスピアが貫く。



次は私とコマチちゃんの番だ。



スライムを城壁の上に吸着させて伸縮させる、同時にコマチちゃんを抱えて一気に城壁の上まで登った。



そこからスライムに包まれボヨンと城壁の内側に着地する。



中にいた兵士一人をコマチちゃんが切り伏せると開門のレバーを引く。



鎖が音を立てながら跳ね橋が降ろされたと同時に門も開く。



遅れてきた馬車の荷台から傭兵や冒険者がわらわらと降りてきて一気に城になだれ込む。



私達も遅れんとばかりに後へ続く。



傭兵達が城内の兵士を抑えてる間に王宮の最奥を目指す。



ようやく王宮内部への扉に差し掛かったとき。



「危ない!」



私はコマチちゃんを抱えて横に転がった。



その後私達がいた場所に炎が降り注ぐ。



そこにはレッドドラゴンに乗った王宮魔導士がいた。



「随分とお急ぎですね、アルテア姫殿下」



その脇から立派な髭を携えた男が顔を出す。



「プランタエール伯、あなたまでプリシラに!?」



え?アルテア様今なんて……



「てっきりお亡くなりになったと思っておりました」



「プランタエール伯!お父さん!私です!娘のステラです!」



男はステラのほうを訝しげに見る



「む、何だお前は?ああ、あの出来損ないの失敗作か」



「え……?」



「お前は私の『人工的に最強の魔導士を作る』計画の失敗作だ」



失敗作……?どういうこと?私は一体何者なの?



そんな疑問が浮かんでは消え浮かんでは消え、完全に混乱してしまった。



「計画の発端は私があるウィルスを発見したことからだ、大気中の魔力を吸収、貯蓄するウィルスだ、そのウィルスを人間に投与するとどうなるのか


 お前とお前の腹違いの姉のシエルに投与した」



ウィルス?投与?



「まさかあの原因不明の流感!?」



「そうだ、それによって大気中の魔力の感知もできるようになる、その成功例がこのシエルだ、学院に行かずとも天才的な才能を発揮した」



姉さん……?この人が



「お父さん、私姉さんと戦いたくない!」



「お前たちは城に攻め込んできた逆賊なんだぞ、我々は我々のやるべきことをするまで」



「コマチちゃん、皆を連れて先に行って、ここは私が何とかする」



決意の表情が伝わったのかコマチちゃんは頷いた



「ちゃんと後で合流して」



「わかってる」



「させない!」



シエルがドラゴンの尻尾で薙ぎ払おうとしたがそれをステラのスライムが止めていた。



「姉さんの相手は私よ」



姉との初対面が戦場だなんて不幸も何もあったもんじゃない



「優等種と劣等種の戦いが見れるなんてすばらしいぞ!」



プランタエール伯は傍観を決め込むように嘲笑う。



「任せてとは言ったけど一人でドラゴン相手はちょっとキツイかな……あはは」



噴水の塔の部分を引き抜きドラゴンの側頭部に当てる。



塔は砕け散ったがドラゴンはまだまだピンピンしてる。



でも塔を引き抜いたことでものすごい量の水が雨状になって降り注ぐ、地の利は得た。



スライムで分身を作り翻弄する、これで何とか凌がないと



ドラゴンがまたブレスを吐こうとした時に下からスライムの巨大な握り拳で殴る。



さすがのドラゴンもこれには効いたようで脳震盪をおこして倒れた。



その瞬間召喚も解除されドラゴンは消え去った。



「己よくも!フラムベルク!」



そういうとステッキの先から炎がほとばしり形作ってレイピア状の燃えた剣とかした。



噴水の雨が降り注ぐ中でも消えないなんてすごい炎と魔力だ



「アレだけのスライムを使ってまだ尚魔力に溢れてる……貴様まさか体外からの魔力吸収ができているのか!?」



そう言われれば私は魔力の絶対量が低いはずなのにずっと魔法を使い続けれてる。



それだけじゃない、スライムで吸着した相手からも魔力を奪えるようだ。



だけどこの剣を避けきるのはそろそろ限界だ。



もう『奥の手』を出すしかない。



次の瞬間、ガキンっと言う音共にステッキが切り落とされた。



「なんなの……それは」



シエルは驚愕の表情で口走った。



銀色でなめらかに濡れているような見た目。



そうそれは流体金属。



メタルスライム。

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辺境に追放された妾の子はスライムでSSSランクになる ~落ちこぼれと言われた奴らの狂想曲~ @satoriikaruga

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