第17話



潮の香りが漂ってくる、もうすぐ港町に着く頃だ。



森を抜け視界が広がるとそこは海だった。



「とりあえず馬を預けて定期便の時間を確認しましょう」



馬屋に馬を預けそこで船着き場へと向かう。



石畳の坂をおりてついた先が港町だ



「うわぁ~これが海なのですね」



先生が定期便の切符を買って戻ってきた。



「昼の便は満員で夜の便しか取れなかったわ」



私も港町を散策できるので丁度いい。



「アルテア様……これ」



焼きイカを頬張りながらアルテア様に焼き鳥を渡す



「わぁ、ありがとうコマチさん」



頭を撫でられてご満悦の表情だ



「私歩いたまま食べるのなんて初めて」



普段とは違う食事法に大変はしゃいでいた



「これが庶民の味なのですね、魚介も新鮮で宮廷料理を上回るかもしれませn」



「そんな宮廷料理には勝てませんよ」



(普段宮廷料理ばかり食べているアルテア様にはジャンクフードが似合うのかな?)



そんな風にアルテア様を見ていた



「ステラ、私の顔に何かついてます?」



ずっと見つめてたのがバレて急に恥ずかしさがましてきた。



「い、いえ特になにも……」



潮風に撫でられながら私達は定期船乗り場へとむかった。



「ここかぁ……」



定期便は大きなガレオン船で船乗り達が荷物を肩にかけ船に積み込んでいた



私達も桟橋に向かい定期便の切符を見せる。



定期便の船乗りが切符を切る。



中へ入ると客室へ向かう、2段ベッドが2つ先生は個室を取ったようだ。



「夜にもし何かあったらすぐこっちへ来なさいね」



そういって先生はドアを閉めた。



「ねぇ甲板行きましょう、折角の船旅なんだし」



ベルは乗り気ではしゃいでいた



私達が甲板へ上がると、ブォーっという汽笛とともに船が港と離れる。



後ろに回って覗きこむとスクリューが回っていた。



そうかこれは蒸気船だったのか



しかし帆も貼ってある、私の時代でいうハイブリッドなのかな



これだけ大きな船を動かすんだ蒸気機関と帆を貼って動かすくらいしないといけないのかな。



この様子ならアルヴォネンまですぐだろう、何せ港町の高台からは晴れている時アルヴォネンが見える



ふと港町方面を見渡すと海側では魚介類の養殖も行っているようだ。



強い西日で眩しくなる、そっか着くのは明日になるのかな。



この海峡は流れが早く帆船だけでは推進力不足なのかもしれない、だから蒸気船だったのか。



このまま一晩眠ると目覚めたら着いているだろう、そう思い床についた。



翌日、何事もなく無事アルヴォネン港に到着した。



「ここから王宮前まで馬車がでているはずですそれに乗りましょう」



私達は馬車乗り場へと向かった。



すると大型の馬車が着いたところだった。



「わぁ~王都の馬車って大きいんですね」



「さぁさ乗った乗った」



尻を叩かんとばかりに先生が乗車を促す。



前の方に乗車した私は覗き窓から前を見ると御者と4匹の連なった馬が見えた。



この馬車が王都を周回しているのだ勿論他にも何台か周回しているだろう、



馬車に備え付けられた鈴が音を鳴らす、出発の合図だ。



覗き窓を見ていた私は再び席に戻る。



しばらくすると馬車が動き始めた。



車窓から外を眺める、さっきまで乗っていた定期便や漁船など様々な船が係留してある。



少しすると風景は丘の斜面へと変わる。



風車の回る丘の横を通り抜けると立派な石畳道が広がった。



次第に王宮の城壁も見えてくる。



馬車が止まると御者が声をかける



「王宮前~王宮前~」



私達5人はゾロゾロと馬車を降りた。



そして城門前までくると衛兵が長槍をクロスさせて道を塞いだ。



「お前たち何者だ、何の用があってここに来た?」



するとアルテア様が前出て顔のスライムを剥がした。



「私はアルテア・ド・ターブルロンド!アルヴォネン国王陛下に用があってまいりました」



そして左胸のシルバー勲章を見せる。



「訳あってこの様な形でまいりましたが開門を願います」



これには衛兵達もたじろいでしまう。



「か、開門!」



そう言うと二人で門をあける、そして一人が案内役を務めた



その先には庭園があり噴水を抜けてようやく扉までたどり着いた。



「アルテア・ド・ターブルロンド姫殿下がお尋ねになられた、誰かいないか!」



奥からメイドが駆け足で出迎える。



「おまたせしてすみません」



軽く息を切らせながらお辞儀をする



「では、私はこれにて」



衛兵は持ち場に戻っていった。



「姫殿下自らご足労いただき……」



「世辞はよいのです、取り急ぎ国王陛下に謁見を」



そういうとメイドは少し取り乱しながら。



「か、かしこまりました少々お待ち下さい」



そういうと代わりのメイドがきて客間へ案内された。



ティーカップに紅茶を入れ私達の眼の前においていく。



見渡すと豪華な装飾品に壺や絵画まで王宮に相応しいものだらけだ。



紅茶を半分くらい飲んだところでコンコンというノックと共に先程のメイドが入ってきた。



「謁見の準備が整いました、どうぞこちらへ」



メイドに案内されるままに謁見の間へ辿り着く。



そこには立派に髭を伸ばした少し小太りの壮年の男性が玉座に座っていた。



「国王陛下お久しぶりです」



「うむ、アルテア殿は亡くなられて立派な国葬をされたと聞いていたが……」



「訳あって死を装い護衛数名と共にこの地へやってまいりました」



ふむ、といった感じで髭をなでながら問いかける。



「そなたが本物であるという証明はどうしたものかの」



そう言われるとアルテア様は服の中に隠し入れていた首飾りを出した。



そこには繋いだチェーンに指輪がはめられていた。



「これが王家の象徴の指輪です」



アルテア様は国王の近くに行って指輪を見せた。



「ほぅこれは紛うことなき王家の指輪」



アルテア様は見せ終わるとスッと一段下がり私達同様膝をつく。



「して、その姫君が一体余に何のようかのう」



「今回の戦争の件についてご助力を願いに来ました」



ふぅと一息つくと国王は



「二人で話がしたい余の部屋へ来るがよい」



そう言うとメイドの一人が扉を開けて国王が入っていく。



「アルテア様!」



私は思わず声をかけてしまう。



「大丈夫です、貴方達はまっていて下さい」



そう言うと国王の後へと続いて入っていく。



「こちらでお待ち下さい」



メイドの一人がさっきの客間へ案内する。



アルテア様は大丈夫だろうか、不安がよぎる。



一方で国王の居室へと案内されたアルテアはまずソファーに座ることを進められた。



その後国王もどっしりと立派な椅子に座り込む。



「その死を装ってまでの様子じゃ何か訳ありなのだろう、物資の補給……というわけでもあるまい」



「おっしゃる通りです我が国は隣国グリタニアとの戦争状態にあります陛下には和平交渉の場を作って頂きたいのです」



「しかし元女王のプリシラ殿はどうする?」



「我が国は戦争派と非戦争派とで内紛状態にまで陥ってます、私は戻って国を一つへまとめ上げねばなりません、そのためにはたとえ腹違いとはいえ妹を討つ覚悟にございます



「そうまで覚悟があるなら余も何とかしようぞ」



見上げた根性じゃと笑う国王に少し俯きがち顔を伏せた



「しかし一体どうまとめ上げる?」



「非戦争派の反政府組織に助力を請い内戦をまず何とか致します、その上で陛下に和平交渉の場を作って頂きたく」



「ほほぅ女王の座争奪戦といったところか、勝算はあるのかの」



「多少の血の流れは覚悟の上です」



「魔法学院は非戦争派です、彼女らの力を借りることができればあるいは」



「ではそなたが女王の座を勝ち取った時に余は動けばよいのじゃな?」



「はい、その時はおねがい申し上げます」



「あいわかった、その時は余も助力しようぞ」









客間で待ってる時間はとても長く感じた。



ベルもそわそわしている。



コマチちゃんはウトウトと眠りかけていた。



その度胸を少しでもわけてほしい。



扉のノックの音と同時にアルテア様が戻って来られた。



「アルテア様!……」



私がいいかけた途端アルテア様は片手を上げてそれを遮った。



「話はつきました、さぁ我が国へ帰りましょう」



用意してもらった馬車に乗りまた港まで戻る。



「これから反政府組織とあって彼らの力と魔法女学院の力を借ります、そして私が王位を獲得した時にグリタニアとの和睦交渉へ入ります」



「それってアルテア様……」



私が言いかけたあとベルが続ける。



「クーデターを起こすんですよね?」



「ええ、暴走したプリシラを討ち取って私が正式に王位を継承します」



「でもそれじゃ……」



「覚悟はできています後は同志を募るだけです」



船着き場から定期便に乗り込む時アルテア様には決心の表情が見て取れた。



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