第16話

翌朝……。



伝書鳩が先生の元へ飛んでくる。



どうやら国境付近の兵は下がっていったそうだ。



ひとまず安心だが暴君プリシラがまた進撃を開始しても遅くはない。



彼女に慈悲はなく兵を駒のように扱う性格だ。



そんな女王陛下からの直々のお呼びがかかった。それも急ぎの帰還スクロール付きだ。



どうも昨日の敵駐屯地焼き払いの労いだろうだ。



こうなってまずいのはアルテア様がいることだ。



「ねぇステラ、なんとかならないの?」



「う~ん今それ考えてるところ、あ、そうだ」



「アルテア様、ちょっと失礼」



そういうと私はアルテア様の顔にスライムをくっつけた



「これで擬態化魔法をかければ……ほら別人に」



「流石にやるわねステラ」



「これなら謁見でばれないでしょ」



「やるじゃん……」



これでバレる心配はなくなった。



スクロールで帰った後私達が寮部屋で作戦を練る。



「謁見の間、アルテア様はしゃべらないようにおねがいします」



「心得ております、しかし不思議な気分です、まるで顔に吸い付くように自然です」



顔にスライムをくっつけて擬態化魔法をうまくつかえた。



これは他にも応用できるかもしれない。



そんなこんなしてるうちに王宮御用達の馬車が到着した。



5人とも乗り込むと先生が馬車の壁をコンコンと軽く叩いた。



馬蹄をならし馬車が動きだす。



「姫殿下、一応私達は極秘任務という形で行動しています」



アルテア様が頷く。



「謁見のほうは私達にまかせて下さい」



先生が説得する



「わかりました。謁見の件はお任せします、ですがなるべく早い和睦を……」



アルテア様も正体を明かせないので先生の指示に従う



「私達もできうる限りのことをやってみます」



話が一段落ついたところで馬車は王宮までやってきた



私達5人は衛兵の後をついていき巨大な大広間にでた。



赤い絨毯の奥を進むと女王陛下が玉座に鎮座していた。



「シャルム魔法女学院、極秘任務隊、只今到着しました」



先生が片膝をつくので私達もそれにならう



「そなたらの功績により我が軍は進行の目処がたった褒めて使わす」



「ははっ、有難き幸せです」



「そなたらの名を聞こう、名乗るがよい」



「極秘任務隊、隊長のクレアです」



「同じく極秘任務隊、ステラです」



「同じく、ベルナデッタです」



「同じくコマチ……です」



「同じく、アルテー……アルです」



他4人は冷や汗かいた危うく本名をバラすところだったのだ。



「敵の大将首もとったというな、これは褒美の勲章がいるな」



プリシラはパンパンと手をたたくとメイドが台を押しながら現れた。



「これが勲章である、各々前へでよ。」



そう言われると渋々だろうがそんな素振りを見せず先生は玉座の前へでた。



淡々と勲章をつけてもらう。



さすが先生顔色一つ変えずに……



私達の番も終えていよいよアルテア様の番がきた



腹わた煮えくり返すものだと思ったけど



私のスライムで作り笑顔に変えた



「それはシルバー勲章だ、王国を象徴するものでもある、大事に扱うのだぞ」



「ハッ」



全一致で返事をした



「女王陛下、一つ提案があります」



「申してみよ」



「敵陣は今回の件で一時的に撤退したに過ぎません、今のうちに城周辺に防御壁をつくるのは行かかでしょう駐屯地は狙われないように防御壁の内側に作ることおすすめします」



「うむ一理ある、今回のゴタゴタで敵がまごついている間に大きい防御壁と投石機を導入するのもよかろう」



「はっ、ご提案採用して頂きありがとうございます」



これで軍備を整えるまでの間、充分に時間は稼げたはずだ。



アルテア様は確かに怒りはあるがこの勲章の示す部分は大きい、並の士官と同等の位になるのだ。



私は父のことを聞きたかったがこの状況では言えるわけもない



この勲章さえあれば王宮に出入り自由になったのだ。



王宮に自由に出入りできるであれば父に関することも聞けるかもしれない。



今日は分が悪いが日を改めてくることにしよう。



そんな不安な気持ちを前に馬車は走り始める。



「この勲章ってすごいんだね、王宮図書館自由に閲覧できるんでしょ?」



ピカピカに光る勲章をみてベルが言う。



アルテア様はどこか憂鬱げに窓の外出て街を眺めていた。



「アルテア様、大丈夫ですか?ご気分が優れないのでは?」



アルテア様が重い口を開く。



「大丈夫よ、今この戦争をどう止めるか考えていました今の軍では街に突破されることはないでしょうけど、街の民のことを考えると心配で心配で、


 こちらは敵の司令官を殺めてしまってるし……」



「それは間違いではありません、もしあそこで斥候を逃していたら迂回路から敵が一気に街に攻め込むます」



「そう言って貰えるだけ私は幸せ者なのでしょうか」



「ですね、アルテア様は私達が命に変えてもお守りします」



「貴方に助けられた命、国のために使わせて頂きますね」



「流石にプリシラに正体は明かせないわね」



くすっと笑みをこぼす。



「私に今の兵や民を血を流さないで護ることがきるのでしょうか」



「アルテア様はまだ死んだままと思わせるのがいいでしょう、今正体を明かすと内紛が起きてしまいます、私も実はこの戦争の集結が見えないのですクーデター組織もあるようですが今アルテア様という錦の御旗を渡すわけにはいけないのです」



「アルテア様の求心力はものすごく高かったので、クーデターは成功するでしょう」



「でも内紛を起こすというこは敵にとっても好都合、今は身分を偽っているのが良いでしょう」



「ありがとうステラ、このテラスでは身体が冷えるわ、もう戻りましょう」



私はアルテア様と相部屋だった



ベッドに入ってからも中々寝付けないでいた。



「ステラ、起きてる」



「え、あ、はい」



「私はもしかしたら妹……プリシラを討たねばならないかもしれないのです、お父様を殺した愚かな妹を……」



「仇討ち……ですか」



父殺しの証拠はすでに隠滅されてるか、普通の検死官も見分けられないほどのものか、あるいは呪詛



「証拠もまともに無いのに動きようがありません」



私は必死でアルテア様宥める。



「私は早々にグリタニアへ行き国王に和睦を持ちかけたいのです」



「ですがアルテア様、グリタニア王城は強固な守りで固められていますいくら少数精鋭でも突破するのは困難かと」



ベッドで座り二人で話し込む。



「アルテア様、敵司令官のことをお忘れですか?私は和睦は難しいと思います」



「ステラ……私はどうしたら良いのでしょうか……


 父は今までの平和を乱さないためにも軍備を整えていました、多分無条件降伏を回避したかったのでしょう、和睦による解決、それは父も私も同じ考えです」



「しかし今の女王陛下は戦争をして領土を広げるのが一番だと思ってるみたいです」



「ステラ、貴方の意見を効かせてちょうだい」



「わ、私ですか!?私は……泥試合の上での和睦がいいかと思います、奮起した敵兵はもう上の都合で止まらないと思います」



「しかし兵の犠牲が……」



「多少の犠牲はもうやむ無いでしょう」



「女王陛下に煽られて、もう止めようが無いと思います」



「今や志願兵を募りCランクの魔導士も導入する準備をしているとのこです、ベルの隼が教えてくれました」



「そんな……もう止めようが無いのですね」



「我が学院からはなるたけ出兵させたくないのですがね」



「それなら……!」



先生は遮るように言い放った。



「もし出兵を拒むなら反逆者あつかいですよ、私達教師ができるのは生存率を上げる方法を伝授するだけ」



先生は冷徹な顔で言い放った。



「ここはグリタニアの反対の隣国に助けを求めましょう我が国とも貿易を行っていて友好的であるいっとも過言ではありません


 隣国のアルヴォネン国王ならこの事態に手を貸してくれるはず」



「アルテア様、2つの国は海峡を挟んでおります」



「しかし征くしかないのです」



「でもアルテア様、アルヴォネンはここから馬で半日以上はかかる距離ですよ」



「馬は途中で馬屋に預ければいいのです帰りにも使うでしょうから、定期便が出ているはずです、それに乗っていきましょう」



私達は定期便が出る前につかなくてはならないので朝早くに学院をでた



馬蹄を響かせながら5人は森の一本道を駆け巡っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る