戦乱、悲劇、騒乱。

新たな名前をルーデリヒ、いやアヴェンドから授かりレヴェイト・ルーデリヒとして生まれた私はその日から毎日アヴェンドの付きっ切りで学び生きた。言葉を学び料理を習い作法を教わり騎士団の一員としての武術の稽古も付けてもらった。あらかたの料理方を覚え、作法も成っていった。武術や剣術は元々覚えが良い方だったので料理などよりは比較的早く上達し、その腕は既に2番隊の中ではかなりの上位に食い込んでいた。しかし言葉は進展が遅く読みや書きよりも発声がまだ未熟だった。

ようやっと私が言葉を少しずつ話せるようになってきた頃、王宮に敵国の軍勢が王の首を獲り国を奪おうと侵略して来た。私にとっては初陣であったが、その戦いは熾烈を極めていた。出陣した私が見た光景は今も脳裏から離れない。馴染み深かった街の地は荒らされた土と血に塗れどす黒く染まり、逃げ遅れた市民が無意味に殺され地に転がり、他の兵士たちも遺体や切り落とされた腕や脚、兵士たちの持っていた剣や盾も血に塗れ放置されていた。初めて見る光景を私はしかと目に焼き付けた。これが私の、私たちの歩む道なのだ、と。気を新たに持った私は敵軍の進行阻止のため、彼らを殺した。数は覚えてなどいない。ただ王を守るために生き育てられたと自負しているため、ただひたすら敵を切る。敵兵の数が少なくなったと気づいた時、司令部から伝令が入る

「王宮にて敵伏兵確認、現在2番隊隊長らが交戦中。これを援護せよ」と。私は共に戦っていた隊員達と共にアヴェンドが戦っているであろう王宮内部に即座に移動した。しかしそこにはもう敵の伏兵などは居らず、床に転がった亡骸の中肩から腹部にかけ大きな傷を負い膝をついているアヴェンドだけがそこに居た。

「たっ......隊長ォォォォォ!!!」

共に来た隊員達は武器を投げアヴェンドに走り寄った。皆表情を変えアヴェンドに声を掛けていた。そんな中私は表情などを変えずアヴェンドに歩み寄った。変えなかったのではなく、変える術を知らないからだ。表情や感情などは誰からも習って居ない。他の隊員から檄を飛ばされながら私の親アヴェンドの側まで歩み寄り、膝をつき彼の顔を覗き込んだ。その表情は私にはどう表現したら良いのか分からなかったが、隊員達が言うに、「後腐れなく、主命を全うし満足げな顔」だったと言う。

アヴェンド・ルーデリヒは全ての騎士隊員達により大きな葬儀が行われ弔われた。彼は口は悪いが人がよく、多くの人に好かれているようでかなりの数の隊員が涙を流して居た。その葬儀の途中、2番隊副隊長の者がアヴェンドの部屋で遺品を整理している時に見つけたと言う置き手紙を読んだ。

『この戦いで、私が戦死したのなら新たな隊長を決めなければならない。私が贔屓せず実力を見て決めた結果、次期隊長はレヴェイト・ルーデリヒとする。異論は認めん』と。

これを聞いた隊員達は賛成の声や罵声、反論の声を上げた。どちらかと言わずとも反論が圧倒的だった。その騒乱の中私は隊長であり親であったアヴェンドの使命を受け継いで王宮を守ることとなった。

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亡者は異世界に何を見る クロケモノ @yamakake120605

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