新たな誕生

あのような出来事の後、私は騎士隊長アヴェンド・ルーデリヒことルーデリヒにそのまま連れて行かれ第2番隊の隊員になった。勿論、年端も行かない私は隊内では特別な階級から始まるわけでもなく、隊内の世話役から始まった。しかし、だ。私はただの子供でかつ教養も持ち合わせていなかったため掃除や洗濯、通常の人間が出来るはずの生活に必要な行動は何1つ出来なかった。その姿を見てルーデリヒは少々呆れた様子で私を呼び寄せた。

「...お前本当に何もできないのか?」

言葉もままならない私には、その問いの返答が動きと態度でしか示せない。怯えざまに首を縦に振った。

「そうか...」

少し長い間の中で私は多くを考え決意した。どうせ盗みと喧嘩しか能の無い人間なのだから、捨てられて当然だ。まずこんな子供を拾うことが間違った判断だった。元に世界に戻ったら次はどの店を狙おうか。見捨てられる準備は万端だった。しかし、この男ルーデリヒは常人の想像をはるかに超える返答でいつも周りを驚かす男だった。

「よし、ならば俺が直々に全てをお前に教えるとしよう。炊事洗濯掃除、それから言葉と剣術武術。何から何まで付きっ切りで見てやろう。子供のようにな!」

この時私は彼がおかしいのか、それともこれが「親」と言うものなのか理解できず、表情のない顔をと下に向けることしか出来なかった。

「よし、じゃあ今日からお前は俺の子供みたいなもんだ。言葉が喋れん以上、お前は名前も無いと見受けられる。そうだな...子供って言うんだから...」

ルーデリヒは自らの顎に指を掛け、ううむと唸った後、私と同じ目線になるよう屈んで私の目を見て

「よし!お前の名は今日からレヴェイト・ルーデリヒ、レヴェイトだ!今日から改めてよろしくな!わが子よ!」

この時、瞬間に私、レヴェイト・ルーデリヒは新たに生を得た。この瞬間で私は盗みを働く悪ガキから王宮騎士第二番隊の訓練騎士かつお世話係となり先日までの悪を拭い去り誕生したのだ。

空は朝から続いた雨の降りそうなどんよりとした暗い雲が神風に吹かれたかの様に散り散りになり、青い空から陽が差し込み王宮を煌々と照らしていた。

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