十九の段 菰野を守れ!(後編)
ぶおおおーーー! ぶおおおーーー!
菰野の大地に、ほら貝の音が鳴り
義苗さまの本陣から
「おいらたちの村から出ていけー! 山に帰れー!」
勢子たちが大声でわめき、ほら貝を吹いて、猪たちをシシ垣へと追い立てます。
シシ垣まで追いつめたらいつもなら
「猪たちよ、あそこを通って山へ帰れ! うわ、なんで私に寄って来る? 私は山の仲間のタヌキじゃないぞ? タヌキ顔だけど、タヌキじゃない!」
「うおおおお‼ ぼたん鍋にされたくなかったら、シシ垣の外へ行けぇぇぇ‼」
馬に乗ったドラぽんやピョンピョン
大半はドラぽんたちの誘導でシシ垣の外に出てくれましたが、シシ垣の
後から来た仲間の猪に
中には群れからはぐれてシシ垣の
そういう猪たちは
「みんなががんばってくれているおかげで、思ったよりも
うおお⁉ 10数頭の群れが、義苗さまの本陣がある中菰野村めがけて猛スピードで走って来ましたぞ!
どうやら、カラスたちが見逃したノーマークの猪の群れのようです!
「義苗どの、まずいぞ。このままでは中菰野村の田畑が猪の群れに踏み
義苗さまの
「そうはさせるか! 馬公子さまは本陣の守りをお願いします!」
義苗さまはそう
「ものども、オレに続け! 菰野を守るんだ!」
「おおーーーっ‼」
本陣にわずかに残っていた藩士や勢子たちは、
「やれやれ……。
南川先生は、馬に乗って
一方、松平定信さまの隠密たちはというと――。
「ククク。これだけシシ垣を破壊したのだ。
この隠密たちの中では一番まともな
「ちょっとやりすぎたんじゃないのか? これ、
と、心配しています。
隠密たちは、シシ垣を破壊しただけでなく、山に入ってウリ坊(猪の子供)をたくさん
「
疾風の一郎は、縄で体を
「邪眼の二郎。そろそろここから
「恐がりすぎだぞ、疾風の一郎。オレさまたちがどこにいるのかなんて、そんな
めっちゃ
ミヤの声が空から降ってきたのは、その直後のことでござる。
「伊賀忍者を甘く見たら
「な、何だと⁉」
隠密たちがおどろいて見上げると、空から
「ぎ、ぎやぁぁぁ! またお
「くノ一ミヤ、空から
ウワーオ! たくさんのカラスたちが両足でミヤの体を持ち上げています!
カラスに運ばせて空中移動するとは、さすがは目立ちたがり屋!
「みんな! 上から来るぞ、気をつけろ!」
疾風の一郎が刀をぬきながらそう言いました。
その一秒後、
「必殺ハギちゃん張り手! でござる!」
知らぬ間に、ハギちゃんや小野川関、谷川関たちお相撲さん30数人が隠密たちを
「う、うわわ⁉
「
「よくもオレたちの大相撲を台無しにしようとしてくれたな。全員まとめて、ぶっ飛ばしてやる」
小野川関と谷風関が怒りの
「もうこうなったら、力士たちに大ケガをさせて大相撲を中止に追いこんでやる。……わが名は疾風の一郎! いざ
「オレさまは闇の力を秘めし隠密・邪眼の二郎!」
「私は紅蓮の三郎!」
「
「それがしは
「
「
「
「
「
いくら何でも多すぎぃー! 読者のみなさんが知らない内に
「いちいち一人ずつ名乗って、残り少ないページ数を使うな、でござる!」
「げふっ⁉」
「ぎゃぁー⁉」
ハギちゃん怒りの連続張り手が
「私たちも行くぞ。うりゃりゃりゃー!」
「どすこい、どすこーい!」
小野川関と谷風関、他の力士たちも、隠密たちを張り手でどんどん吹っ飛ばしていきます。
「ぐわぁ!」
「ひぎゃぁ!」
ハギちゃんの張り手で飛ばされ、飛んでいった先に待ち受けていた小野川関にさらにぶっ飛ばされ、またもや
うわぁ~……。
「く、くそ。こうなったら、オレだけでも逃げてやる。疾風の一郎
疾風の一郎は、人間
「空には私がいることを忘れたですか?」
「し、しまった!」
シャキン! シャキン! シャキーン!
ミヤが
切ったといっても、服だけですけどね。
忍び
「よ~し、次は爆弾で吹っ飛ばしてやるです!」
「わー、わー、わー! おいらたちまで吹っ飛ぶからそれはダメー! でござる!」
「あっ、そうでした……」
ミヤは相変わらず
隠密たちが完全にダウンすると、力士たちは逃げられないように彼らを縄で
「ウリ坊を助けたでござる。この子たちをシシ垣の外に出してやったら、親の猪たちも大人しく山に帰るはず、でござる」
ハギちゃんがそう言った直後、空中のミヤが
「みなさん、危険だから今すぐシシ垣から離れてください! 猪たちが義苗さまに追い立てられてこっちにやって来ますです!」
ズドドドドド‼
10数頭の猪の群れが、ものすごい
ウリ坊たちは猪の群れに向かって「キィー! キィー!」と鳴きました。
「
「
「
怒り狂った猪たちは「
隠密たちは「ぎやぁぁぁ‼」「ふぎゃぁぁぁ‼」「やっぱり、こうなるのかよぉぉぉ‼」などと口々に悲鳴をあげ、天高く吹っ飛ばされて山のどこかへ落下していくのでした。
「子供と再会できた猪たちが山に帰って行きますです! これで
カラスに下ろしてもらい、義苗さまの近くに着地したミヤがニッコリと笑いました。
「それはよかったんだが……。隠密たち、また増えていなかったか?」
「気にしたら負けです。一匹いたら十匹いると思え、とよく言うじゃないですか」
それはゴキブリの話ですよ、ミヤさん……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます