二十一の段 対決前夜
5月に入ったある日。
ご
そんな雄年さまの
「
屋敷の
「な、何事じゃ!」
雄年さまは飛び起き、部屋の
「ご隠居さまは、もうちょっと眠っていてくださいです」
屋敷の
すると、ヒモからもくもくと
「こういう
煙を吸わないように顔を
江戸に
菰野藩が幕府からもらっている江戸の屋敷はふたつあり、
つまり、義苗さまは今まで殿さまなのに、「まだ子供だから」という理由でご隠居さまのお家にいたわけですな。
「たしかにオレはまだ子供だが、殿さまとして
という
そして、菰野からついて来たドラぽん、ピョンピョン
「わ、若殿さま! これはどういうことですか⁉ 若殿さまは部屋にこもって南川どのとお勉強をしていたのではなかったのですか?
毎日、お部屋から『せんせー、ここがわかりません!』『どれどれ、せんせーにみせてください!』という声が聞こえてきていたので、ヤル気のない若殿がやけに勉強をがんばっているなぁ~と
「あのからくり人形、まだ気づかれてなかったのかよ‼」
もう一か月以上たつのに……。菰野藩士はぼんやりとした人が多いんでしょうか?
「オレは、この一か月ほど
「ええ⁉ 勝手に江戸をぬけ出したのですか? ば、幕府に知られたら大変なことに……」
「
そして、菰野の民たちが
「ご、ご隠居さまから菰野藩を奪う⁉ む、無理無理無理! ご隠居さまに怒られます! よくて
「切腹なんてさせない。みんなはオレの大切な
……今までは自分には何の力もないと思って無気力な毎日を送っていたが、がんばって成長しようと自分から一歩
「新しい菰野藩……」
藩士たちは目を大きく見開き、
「新しい菰野藩だと⁉ ふざけるな! 菰野藩は絶対に
うわわ! 雄年さま⁉ もう目を
藩士たちは雄年さまが上屋敷に
「おびえるな! 殿さまのオレがおまえたちを切腹させたりなんかしない!」
義苗さまは上座からおりると、家来たちを
ミヤ、
「
雄年さまは、大声で怒鳴ったら子供の義苗さまは大人しくなるだろうと思い、そう
しかし、雄年さまにビビっていた物語前半の義苗さまではもうありません。義苗さまは
「
義苗さまの言葉に、雄年さまはピクリと
「……『初心忘るべからず』。それは弟が好きな言葉ではないか。そうか、おまえは
「はい。オレは
「ぐ……うう」
おやおや? 馬公子さまの名前が出たとたん、雄年さまの元気がなくなりましたよ?
「……あいつには悪いことをしたと思っている。他の弟たちが他家の
そして、好きな女がいたにも
どうやら、雄年さまにとって馬公子さまは
「本当はおまえに菰野藩を任せたほうがいいのかも知れない。……しかし! 菰野藩は松平定信に目をつけられている! ワシが定信めに
ワシだったら定信と戦えるが、逆に弱みをにぎられているおまえでは無理だ。定信はたくさんの
「それを
義苗さまは、尾張の殿さま・チカじいが味方になってくれることを説明しました。
「弟のヤツ、温泉をエサに尾張の殿さまを味方にしたのか。なかなかやるではないか。……だが、それだけでは不安だ。定信という男を甘く見たらいかん。おまえも将軍さまの前であいつの秘密を
「定信さまの秘密とは、何ですか?」
義苗さまがそう聞くと、雄年さまはおどろくべきことを口にしたのでござる。
「定信は田沼意次さまのことを
ええー⁉ それって、今だと
「こうなったら
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