十七の段 立ち向かう勇気
湯の山クマった事件から2日後の夜。
「殿さま。江戸より来た力士たち60数名の
「よくやってくれたな。ドラぽんも少し休め。晩ご飯を一緒に食べよう」
「ははっ。ありがたき幸せ! ……あの。そのお
「
「え⁉ たったそれだけですか⁉」
いつも
「……仕方ないさ。たくさんご飯を食べる力士たちが60人以上やって来ているんだ。江戸で大人気の彼らに
「武士は食わねど
ひとつの梅干しをじっくりと味わって食べる義苗さまを見て、ドラぽんは「う、う、う……。おいたわしや~。
「失礼します、でござる。おいらの
義苗さまたちが梅干しを食べ終えると、ハギちゃんが部屋にやって来ました。
「
だから、菰野藩は、この小野川関にだけは「江戸にいるはずの
「お初にお目にかかります。小野川才助ともうします」
部屋に入って来た小野川関は、義苗さまに
お相撲さんは
「うむ。オレが
「はい。ご飯をたらふく食べることができて、みんな喜んでいます。……しかし、菰野藩のみなさんにはご迷惑をかけてしまったようで、もうしわけありません」
小野川関は、
「い、いやいや! 気にするな! 今日はたまたま梅干しが食べたい気分だったから、その……あの……すまん。正直に言うと、借金まみれで苦しいのだ」
協力してくれている小野川関に
義苗さまのそんな正直なところが気に入ったのでしょうか、小野川関は「菰野のお殿さまのためにも、必ずや大相撲を
「菰野藩のみなさんが梅干しを食べているのに、
「猪の肉? そんなもの、差し入れしたっけ?」
義苗さまが首をかしげると、ドラぽんが「猪の肉を差し入れした
「え? そうなのですか? 寺の庭に猪が三頭もウロウロしていたので、てっきり菰野藩の差し入れだと思いました。張り手で
「猪が三頭もウロウロしているなんて、おかしいですな……。どこかのシシ
また胃が痛み出したのか、ドラぽんが胃のあたりをさすりながら言いました。
「シシ垣って、領内にたくさんあるあの
「シシ垣は、山からおりてくる猪や鹿から農作物を守るための垣です。三尺(約1メートル)ほど
「シシ垣なら、私も
「なるほどな。だから、
義苗さまがそう言った直後、その
「殿さま。菰野の村々の
一人の菰野藩士が義苗さまの部屋に入って来て、そう
嫌な予感がバリバリしていた義苗さまは、一秒も迷うことなく「会おう!」と言って立ち上がるのでした。
庄屋たちを
「猪が各村に出没したので調べたところ、菰野領内の10か所
「何だと?
「はい。
「邪眼の二郎にまちがいない。あの隠密たちの
「中菰野村、西菰野村、東菰野村、宿野村、福村など各村で猪が大量に出没しています。はっきりとした数はわかりませんが、20や30ではありません。数十頭の
忠治がひたいに汗を浮かべながらそう言うと、ドラぽんが「いくら何でも数が多すぎる!
「村の男たちが
お助けくださいと言われても、これは
小さな藩の菰野藩には、たった100人前後の藩士しかいません。そのうち、江戸の菰野藩の屋敷にいる30数人と、老人や病気中で満足に猪と戦えそうにない藩士が10人ほど。殿さまの義苗さまが「菰野藩士、全員集合!」と
「60人に満たない藩士たちだけでは、どうしようもありませんね……。何かいい方法があればいいのですが」
一方、馬公子さまは
「義苗どの。今、何を考えているんだい?」
馬公子さまがニヤリと笑ってそうたずねると、義苗さまは「数日前に南川先生から教わった
「『
南川先生は、ハッとして義苗さまを見つめました。
「その通りです、殿さま。よくぞ言ってくれました。私が殿さまに教えた言葉だったのに、『どうしようもない』などと言ってしまったのが
南川先生は、義苗さまの見ちがえるような成長ぶりが
「これより、
「ははっ!」
「そして、忠治たちは今すぐ村に
「たき火、でございますか?」
「
「なるほど、それは
ミヤから教わった「獣は火を恐がる」という
忠治たち庄屋がそれぞれの村へ戻ると、馬公子さまが義苗さまにこう言いました。
「急いで
「わかりました、馬公子さま。……ものども、出陣だぁーっ‼」
「おおーーーっ‼」
かくして、菰野を守るための戦いが始まったのでござる!
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